Archive for 相続税対策

相続税の基本はやはり土地

~土地資料の収集・現地確認を慎重に~

昨年、国税庁が公表した「平成30年分相続税の申告実績の概要」を見ると、平成30年中に亡くなられた136万人のうち、相続税の申告をした方は11万人と8%強に止まっています。

又、被相続人1人当たりの相続税の課税価額は約1億4千万円、相続税額は約1800万円となっています。

相続財産の種類別構成比は、土地35.1%、現金預金等が32.3%、有価証券16.0%、その他16.6%で、土地の割合は年々減少していますが、やはり相続財産の中で最も大きな位置を占めています。

そこで、今日は土地の相続税の評価について見ていくことにします。

イ.相続により取得した土地の評価は、被相続人が亡くなった日の時価であって申告時の時価ではありません。相続税の申告にあたって、固定資産納税通知書を参考にすることが多いですが、通知書の時価は1月1日現在の時価ですので注意しましょう。

ロ.土地の評価方法には、「路線価方式」と「倍率方式(固定資産税評価額✕倍率)」がありますが、倍率方式の固定資産税評価額については注意が肝要です。

固定資産税の課税に必要で市町村が管理している固定資産課税台帳(名寄帳(なよせちょう))は、明治時代に始まったものですので、測量技術の未熟さ等から地積が実際の面積と違っていることも珍しくありません。

実測面積>公簿面積の場合を「縄延び」 

実測面積<公簿面積の場合を「縄縮み」

といいます。「縄延び」や「縄縮み」の場合は、相続税の申告上問題が生じます。

登記簿の地積や固定資産台帳の地積を修正するため、国土調査法に基づく「地籍調査」が昭和26年から行われていますが、実施出来た割合は令和元年現在で全国の対象面積287966km2の内の148486km2で約52%に止まっています。

路線価方式の「路線価✕面積」の場合のみならず、「倍率方式」においても「地籍調査」が行われていない市町村の場合は「土地の実測を行う」ことを心懸けましょう。

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貸家建付地の留意点

空室期間は1か月程度か -最近の採決事例等を踏まえて-

貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地です。また、「貸家」とは、借地借家法に係る借家に対する保護規定の適用対象となる家屋の賃借人が有する賃借権(これを「借家権」と言います。)の目的となっている家屋をいいます。

そのため、使用貸借契約には適用がありません。

貸家建付地の価額は、次の算式で求めた金額により評価します。

貸家建付地の評価=自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

上記算式における「賃貸割合」は、貸家の各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいいます。)がある場合に、その各独立部分の賃貸状況に基づいて床面積の割合によって計算します。 戸建て住宅には、「各独立部分」という概念がありませんのでこの「賃貸割合」は適用されません。ゼロあるいは1になります。

なお、アパート等の「賃貸割合」について、タックスアンサーでは、以下の要件が規定されています。

1 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されていたものであること。

2 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。

3 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。

4 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。

上記1の要件から課税時期において新築で賃貸が開始していない物件は対象外となります。  貸家建付地の賃貸状況の確認は慎重に行う必要があります。

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最近の相続税の税務調査状況

 

 

 令和元年12月に国税庁より平成30年度における相続税の調査状況が公表されました。

 公表資料によりますと平成30年におこなわれた相続税の実地調査は平成28年に発生した相続を対象としているようです。つまり税務調査は相続が発生した2年後に来ますので2年を過ぎれば調査が来る可能性はぐっと減ると考えて良いようです。

 実地調査の件数は12千件、このうち申告漏れ等は10千件と85%の高い確率で誤りが指摘されています。申告漏れ等の1件当たりの金額は28百円となっています。申告漏れの内容は現預金等が36%、土地が12%、有価証券が11%です。仮装・隠ぺい等して故意に相続税を逃れたとして重いペナルティである重加算税が課されたのは全体の17%ですので、それ以外には相続財産を見つけられずに漏れていたりする事案が多いのではないかと推測されます。

 人生100年時代ともいわれるように平均寿命が女性87歳、男性81歳と過去最高を更新していく中で物忘れ等の症状も増えています。被相続人になる方の財産をしっかりと管理しておかないと、相続人が遺産の全体を把握するのは相当に大変な労力であるとともに調査状況をみても把握しきれない実態が垣間みられます。早いうちに財産の状況をご家族で共有することが肝要です。

 またグローバル化がすすむ中で資産運用も国際化されるのに対応して平成30年9月からCRS情報交換という制度がスタートしています。これは各国の税務当局が協力して自国の非居住者の金融口座情報を自動的に交換する制度です。今までは外国にある預金残高等の情報を把握するためには国税は個別に照会をして回答を得る方法でしたが今では自動的に金融口座情報が手に入るようになっています。

 税務当局の調査能力を利用して把握しきれない財産を見つけてくるのであれば税務調査も悪いものでもないとの考え方もできる面白い状況でもあります。

 

 

 

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遺留分侵害への対応で思わぬ課税が

■ 「遺留分侵害への対応で思わぬ課税が」 ■
~留意したい、遺留分制度改正に伴う税コスト~

 亡くなった親が、全財産を長男へ相続させる旨の遺言を残し、もう一人の 相続人である長女の遺留分を侵害しているケースで考えてみましょう。

 民法(相続法)が改正され、遺留分侵害額請求権の金銭債権化が令和元年7月 1日から施行されています。遺留分権利者(長女)は、遺留分侵害額に相当する 金銭の請求ができるようになりましたが、これに対応する受遺者(長男)及び 長女にとっては思わぬ課税が生じる可能性があります。

 長男は必ずしも金銭で支払いができるとも限らず、相続した不動産を長女に 渡して対応することも想定されます。従前はこの取引を譲渡とは考えませんでし たが、改正後は、金銭債権化された遺留分侵害額請求権を消滅させるための「代 物弁済」と認識をしますので、消滅した金銭債権額相当で不動産を譲渡したもの として、長男に譲渡所得税の問題が生じることになりました。代物弁済は、消費 税法上も資産の譲渡等に該当しますので、消費税の負担が生じる可能性にも留意が必要です。

 また、同様に長女にとっても、金銭債権額相当で不動産を取得したものとして、 将来譲渡したときの取得費を認識します。代物弁済で取得したと考えるため、 譲渡までの保有期間も被相続人の取得日ではなく、あくまで代物弁済日を起点と しますので、長女の譲渡所得の計算上、保有期間の長短区分にも影響があります。
さらに、長女が不動産を取得する際のコストは、従前は登録免許税0.4%のみで 済んでいましたが、代物弁済とされたことにより登録免許税2.0%に加え、不動 産取得税1.5%~4.0%が課されることになりました。

 長女から遺留分の請求がなされる可能性が高く、長男は請求に対して金銭での 支払いが困難と見込まれる場合などで、長女に承継させてもよい含み益が大きい 資産があるときは、その資産を当初から長女に相続させる旨の記載にするなど、 遺言作成時には、遺留分侵害額請求の対応による税負担も意識しておきたいところです。




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相続対策としての家族信託の活用

「相続対策としての家族信託の活用」

 大正11年の制定時以来80年以上に渡って存在しているにも関わらず、一般の方にはあまりなじみのなかった「信託法」でしたが、近年「家族信託」を中心にその活用方法が注目されつつあります。

 「家族信託」とは、財産の所有者である「委託者」が健在の内に、その財産の「名義」のみを信頼のおける「受託者」に移転し、その権利については委託者が「受益者」として保持し続けるという特殊な契約形態になります。

生前贈与と異なる点は名義変更のみで実体的権利に変動がないため、契約締結時に不動産取得税や譲渡所得税が課税されない点です。では、権利が動かないのに何のために信託する必要があるのかと疑問を抱く方もいらっしゃると思います。

その理由としましては、契約内容を成年後見人制度や遺言に比べてかなり柔軟に設定できることにあります。

 一例になりますが受益者が認知症などで意思決定が難しくなった時、資産の管理や運用を受託者に一任する内容を組み込むことが可能になります。これは成年後見人制度に比べ、管理のみならず運用や売却も任せられるため資産の凍結を防ぐことができる点で優れています。また、受益者が死亡した後に受益権が継承される「第二受益者」、第二受益者が死亡した後の「第三受益者」を明記しておくことで、資産の継承先を数代先に対してまで委託者が定めることができます。

 継承先の法的効力が1代限りである遺言と違い、受託者が管理することで委託者の意思を最長30年に渡るまで反映させることが可能であり、今までになかった円滑な事業継承が可能になります。しかし、最長30年に渡って「受託者」に全てを一任することになりますので、受託者の選任が大変重要になってきます。そこで、「信託監督人」を設定することで受託者の信託業務を監督する機能を持たすこともできます。

 現時点ではまだ認知度が低く、裁判例も少ない「家族信託」ですが、今後の様々な場面での活用が期待できますので、検討してみてはいかがでしょうか。



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特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除

特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除

 バブル時代、大昭和製紙社の齊藤了英氏が、ゴッホの「医師ガシェの肖像」やルノアールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を高額な値段で落札し、「死んだら棺桶に入れてもらうつもりだ」などと発言されたことがありました。当時「公開してくれないものかな」、その後も「いつか見たいものだ」と考えておりました。

 数年前、オルセー美術館で「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を間近で見ることができた時は「ここにいたのか」と感動しました。

 文化的価値の高い美術品を所有する方は、人類の預りものとはいえ、所有するために高額の対価を払い、一般の人々に鑑賞させてくれるのですから、感謝しなければなりません。

 世界的価値のある美術品にも金銭と同様の相続税を課税し納税を求めると、価値ある美術品が、行方不明になったり、海外流出してしまったりと、次世代に引き継がれないことも懸念されます。

1.制度の概要

 預託先美術館の設置者と特定美術品の寄託契約を締結し、認定保存活用計画に基づきその特定美術品をその寄託先美術館の設置者に寄託していた者(以下「相続人」といいます。)から相続又遺贈によりそのと特定美術品を取得した一定の相続人(以下、「寄託相続人」といいます。)が、その特定美術品の寄託先美術館の設置者への寄託を継続する場合には、その寄託相続人が納付すべき相続税のうち、その特定美術品に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、寄託相続人の死亡等により、納税が猶予されている相続税の納税が免除されます。

2.適用開始時期

 この特例は、平成31年4月1日以降に相続又は遺贈により取得する特定美術品に係る相続税について適用されます。

3.特定美術品

 この制度の対象となる「特定美術品」とは、認定保存活用啓確認に記載された次に掲げるものをいいます。

・重要文化財として指定された絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産

・登録有形文化財(建物を除きます。)のうち世界文化の見地から歴史上、芸術上又は学術上特に優れた価値を有するもの

4.相続開始前にすべきこと

 相続開始前に、被相続人が、特定美術品について、「寄託先美術館の設置者と寄託契約を締結し寄託していること」及び「文化財保護法の規

定に基づき保存活用計画に係る文化庁長官の認定を受けていること」が必要になります。

 相続開始後から相続税の申告期限まで、またその後の納税猶予期間中も重要な様々な手続きがあります。

5.納税猶予の期限到来

 次の場合には、猶予期限の到来となり猶予されている相続税と利子税を納付しなければなりません。

・譲渡(寄託先美術館の設置者へ贈与した場合を除きます。)した場合

・滅失(一定の災害による滅失を除きます。)、寄託先美術館において亡失もしくは盗み取られた場合

・寄託契約期間の終了した場合

・認定保存活用計画の認定が取り消された場合

・認定保存活用計画の計画期間満了後4か月を経過する日において新たな認定を受けていない場合

・重要文化財の指定が解除又は登録有形文化財の登録が抹消(一定の災害による滅失に基因する場合を除きます。)された場合

・寄託先美術館について、登録の取消等がされた場合

6.納税の免除

 次の場合には、免除届出書及び一定の書類を提出することにより、納税猶予されている相続税の納付が免除されます。

・寄託相続人の死亡した場合

・寄託先美術館の設置者に贈与した場合

・一定の災害により滅失した場合

 オルセー美術館にある「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」は、齊藤氏が購入したものとは別のものであったようです。(大小2枚がある。)齊藤氏が購入したものは、現在は海外のコレクターが所有されているようで、相続を要因としたわけではないのですが、日本には無いようですし、見ることはできそうにありません。

 



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タワーマンションの節税が租税回避行為と認定

 時価と相続税評価額が大きく乖離するタワーマンョンの節税方法を、国税局も黙って見ていません。

いわゆるタワマン節税で、行き過ぎた節税策がなされていないかを国税局は厳しくチェックしています。

 平成29年に税法改正による、固定資産税の負担割合の変更もその一環と言われています。そして、タワーマンション購入がそもそも租税回避行為と認定されれば、タワマン節税が否認されるという事例もあります。

 特に、

1.購入日と相続発生が近い

2.相続発生後に即売却している

などの場合、租税回避行為と見なされ、タワーマンションの購入資金が

相続財産と税務署にみなされます。

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〈平成23年7月1日採決〉

【概要】

◯平成19年7月4日父が入院

◯8月4日父名義でマンション(30階の1室)を2億9300万円で取得する売買

契約を締結

◯8月16日所有権移転登記が完了

◯9月3日父が死亡

◯11月13日相続人への相続登記が完了

◯平成20年相続税申告、マンションを5802万円として評価

◯7月23日相続人がマンションを2億円8500万円で売却する売買契約を締結

◯7月24日に売買を原因とする所有権移転登記が完了

【採決】

◯不動産の評価は、原則として評価通達(路線価などによる評価)により評価す べきであるが、特別の事情がある場合は、他の合理的な評価方法によることが許される

◯以下の理由により、取得価額とほぼ同等と考えられるので、2億9300万円 とするのが妥当

◯マンションの取得時(平成19年8月)と相続開始時(同年9月)が近接して いると

◯取得時の金額が2億9300万円であること

◯相続人からマンションを取得した者が、売却を依頼した時点(平成20年7月 及び8月)の媒介価額が3億1500万円であること




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空き家に係る3,000万円特別控除

「空き家に係る3,000万円特別控除」
―その適用範囲改正―

 「空き家」問題は地域住民の生活の安全性などに大きな影響を及ぼしています。
またその背景の根源には、我が国における人口減少社会への移行、土地の資産としての有利性の低減など様々な経済社会構造の変化があると考えられています。


そうした問題対処のために、平成28年度税制改正の際に、相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除が創設されました。そして今般この特例についての改正が予定されていますのでこの件をまとめてみます。


(1)特例の概要
相続によって取得した空き家を1人暮らしだった被相続人が死亡した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した時は、その空き家に係る
譲渡収入から3,000万円の特別控除が認められるというのがその概要です。


その要件は当初厳格で、① 被相続人が居住の用に供してきた「昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地」に限られ区分所有建築物は除かれます。


② 建物を壊した敷地のみの譲渡、建物の耐震基準を満たす耐震リフォームをしてからの譲渡が求められます。すなわち、あくまで相続から譲渡まで引き続き空き家である必要があります。


(2)平成31年度税制改正
①31年12月末で期限切れとなる本特例の適用期限が4年延長されることになりました。
②以下の様に老人ホーム等の入所に対応した要件の改正がなされました。
 ・被相続人が介護保険法が定める要介護認定等を受け、かつ、相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していたこと。
 ・被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続開始の直前まで、その者による一定の使用がされ、かつ、事業用、貸付用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないことが求められます。
③適用時期については、平成31年4月1日以後に行う被相続人の居住用家屋又はその敷地の譲渡に対して適用されることになります。



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相続税申告において一番基本的でかつ曖昧な財産

「相続税申告において一番基本的でかつ曖昧な財産」

~相続時点での現金評価~

 今回の調査は、非上場株式の一部相続時精算課税、養子の代襲相続そして広大地評価などポイントが満載の相続税調査でしたが、調査で一番問題となったのが現金の評価です。

 被相続人は、亡くなる半年前くらいから病院に入院し、以降病院を転々とすることになるのですが、入院の前に数千万円の現金を引き出しており、そのことが問題となりました。

 当然のことながら相続税申告にあたって預金通帳をお借りして預金のトレースしたわけですが、相続税調査の結果、他の振替事実が明らかになったことで、数千万円が宙に浮いた格好になりました。

(調査官)この引出はだれが行ったのですか?

(相続人)父に指示されて私が銀行で引出して父に渡しました。

(調査官)その後入院されましたが、現金はどこにありましたか?

(相続人)すべてかどうかわかりませんが自宅の金庫にあったと思います。

(調査官)その現金はその後どうなったのですか?

(相続人)父から指示された金額をその都度病院に持って行きました。

(調査官)お父様が亡くなられた時点で現金はどの位ありましたか?

(相続人)正直亡くなった時点の金額は、数えていないのでわかりません。

(調査官)今はそのお金はどうなっていますか?

(相続人)父が亡くなった後にいろいろと出費しているので今は残っていません。

 と言ったような問答があり、結局のところ、調査官からの指示により、私が相続人の陳述に基づき現金出納帳を作成し、相続時点で○○万円の現金残高が存在したと推定されることを報告し、調査は終了しました。

 調査の結果としては、還付金から減額されるという結果で終わったため、後を引くことはありませんでしたが、一番基本的な財産である現金について、このような曖昧な申告をすることしかできないことに関して改めて問題であることを意識しました。

 相続税申告に当たっては大小を問わず必ず出くわす現金の評価問題ですが、事業であれば必ず記帳されているべき現金出納帳があれば、このような問題は発生しません、改めて相続関係者による現金出納帳の作成について指導の必要性を感じたしだいです。

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相続時精算課税制度に注意を!

 

「相続時精算課税制度に注意を!」

 

 

1 相続時精算課税制度の留意点(いま一度)

相続時精算課税制度(本制度)とは、生前贈与をする場合、受贈者の選択により暦年課税制度に代えて、贈与財産のうち累積2,500万円を超える部分について贈与時に贈与税(20%)を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基にした相続税額から既払贈与税を控除することにより贈与税、相続税を通じた納税をする制度です。

本制度の大きな問題点は、その適用を受ける親子は一度その選択をすれば(暦年課税に後戻りできません)、所定の届出、申告を行い、その後、1円の免税点もなく贈与する都度贈与税の申告を行い、贈与者が死亡した時に贈与財産の贈与時の時価を確認して相続税の申告をしてその精算を行うことです。

仮に、親が65歳の時に本制度を適用し、100歳で親が亡くなった場合、35年間も1円以上の贈与について記録しておくことが可能でしょうか。

また贈与税の申告を怠っている場合も想定されます。贈与税の期限後申告では2,500万円の累積非課税枠は利用できません。したがって、贈与財産の20%が贈与税として課税されます。暦年課税の非課税枠110万円を念頭に、少額な贈与財産にかかる贈与税申告を失念していないか細かな注意が必要です。

本制度は平成15年から導入されていますが本制度の仕組みを再度確認しましょう。

 

 

 

2 戸籍の附票(入手に四苦八苦?)

本制度の適用に当たり受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で、受贈者が20歳に達した時以降の住所又は居所を証する書類(受贈者の平成15年1月1日以降の住所又は居所を証する書類でもOKです・・平成7年1月2日以前に生まれた方が平成28年1月1日以降に贈与を受け、相続時精算課税選択届出書を提出する場合)を添付することとなります。戸籍の附票は住民票と同様に住所履歴を表わしますが本籍地の市区町村が管理する記録です。このため、戸籍の移動が行われていない場合、ひとつの戸籍の附票の中に全ての住所履歴が記録されることになります。逆に住所を移動していない場合でも、結婚・離婚・養子縁組・養子離縁・他市区町村への転籍などにより戸籍の移動が行われた場合、ひとつの戸籍の附票では住所履歴の確認ができません。したがって異なる市区町村から戸籍の附票を入手することとなり結構手間がかかります。

 

 

 

3 戸籍の附票は何のために必要か?

税務署は本制度の添付書類として戸籍の附票を重視しています。納税地を転々とする受贈者が本制度を適用した以降に異なる納税地で贈与税の申告をしていないか、また誤って暦年課税で贈与税の申告をしていないかなどを確認しているようです。なるほどですね。それにしても本制度は納税者と税務署との宝探しの様相と言えますね。マイナンバー制度が普及・定着すればこの添付書類についても改正されるでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

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