Archive for 2014年2月24日

鉄人になった息子の話

「鉄人になった息子の話」
━♪ いいも わるいも リモコンしだい? ♪━

癌になり余命数か月のYさん。奥さん52歳。娘さん27歳(嫁いでいる)。
息子さん25歳(結婚して父母と同居)。子供達の配偶者も含め仲のいい家族。

「争続なんてうちに限ってありえない」そんな思いのまま亡くなられたと思います。
享年55歳。その奥さんが相談に来られました。
「主人の財産は土地と家と預金が3,000万円くらいです」
相続財産を計算すると、奥さんが全て相続すれば配偶者の税額軽減で今回は相続税をゼロにできる状態でした。
そこで、「奥さんはまだまだお若いし、これから2次相続の対策をするとして、今回相続税はあまり掛からないようにしましょうか?」と提案したところ、

「はい。子供達も私のいうことを聞きますので、子供達には預金を500万円ずつ相続させて、残りは私でお願いします」とのことでした。

奥さんの年齢と相続財産のボリュームを考えてこれで良いと作業を進めていたところ、ある日若い男性が事務所にやって来られました。
そう息子さんです。
ただ、何故か、覇気なく、もじもじと、奥歯に何か挟まったように、「な、、なっとくできないんです、、、こ、、、この遺産の分け方、、、」「お父さんとお母さんが残した財産、確かにあなたも法定相続分を主張できるけど、同居もしているし、その主張はお母さんとガチンコになると思うよ」と諭しても、変わらず冴えない表情で、「納得できない」と続ける彼、、、なんだかいやいや言っているようでした、、、。

もうお分かりですね。
姑とうまくいっていない嫁が正太郎となり、強力なリモコンで息子さんを鉄人28号にしていたのです。
自分の意志ではない行動。
そう、お父さんが亡くなり、崩れたパワーバランスは地底深く、見えないところで燻っていたマグマを噴火させていたのです。

何がいけなかったのでしょうか?遺言書がなかったから?

もちろんそれはそうですが、後から遺言書は作れません。
相続発生後、できたことは遠隔操作で相続に参加できる人間を作らせないことだったと思います。

自分の旦那には言いやすくても、面と向かってお義母さんには言えないものです。
また相続は亡くなられた時点での財産の分け方を決めるのですが、気持ちはそこに行き着くまでの家族の歴史から始まります。

その部分は途中から歴史に参加しているお嫁さんには分からないことも多いはず。
娘さんや息子さんの配偶者も含め、みんな顔が見える状態で遺産分割協議をしていたら、うまくまとまっていたかも知れません。

 

【長公認会計士事務所の相続・事業承継のページ】

http://www.chou-acctg.com/chou-souzoku.com/

 

熟慮期間で負の財産の確認を十分に!

「熟慮期間(3 か月)で負の財産(借金等)の確認を十分に!」
━いつの間にか借金まで受け継いでしまった相続人━

父・太郎さんは、働き盛りのサラリーマン。
突然倒れると、余命3 カ月の末期ガンと診断され、治療の甲斐なく亡くなりました。

相続人は、パートで働きながら家計を切り盛りし、しっかり者の妻・花子さんと家庭を持つサラリーマンの長男・一郎さん、そろそろ結婚も間近な一人暮らしのキャリアウーマン、長女・良子さんの3 名。

亡くなった太郎さんが残した財産は、自宅と土地、妻を受取人にした1,000 万円の生命保険に退職金と預金がそれぞれ1,000 万円ありました。

しかし、お人好しで頼まれると断れない性格の太郎さんには妻に内緒の借金がありました。
妻に打ち明ける勇気のなかった太郎さんは、死に際に友人に300 万円の借金があることを話しただけで他界。
葬儀や名義変更などの手続きで忙しく、借金のことは詳しく調べることができませんでした。

結局、遺産は母・花子さんが、自宅と土地、生命保険を、長男・一郎さんが退職金と預金を相続。
長女・良子さんは相続しないということで遺産分割協議書を作り、それぞれ署名押印しました。

太郎さんが亡くなって4 カ月後、突然、金融業者が債権の取り立てにやってくるという思わぬ相続トラブルが家族を襲いました。
その額2,000 万円!相続放棄しようにも既に手続きの期限である3カ月が過ぎ、どうしようもなく、花子さんと一郎さんがそれぞれ1,000 万円を負担して太郎さんの借金を返済しました。

数年後、さらに、悲劇が!嵐のような相続トラブルをようやく忘れかけた頃、銀行から父が連帯保証人になっていた借金3,000 万円の主たる債務者が破産し、その返済を太郎さんの相続人にという連絡が入りました。

相続放棄の書類だと思いこんでサインした長女・良子さんが確認してみると、それはただの遺産分割協議書で、正式な相続放棄申述書ではなく、良子さんも保証債務の履行の義務が。

(このようなトラブルを防ぐために)
民法では、借金を払って残りがあれば相続する方法(限定承認)や多額の借金など財産の一切を相続しない方法(相続放棄)が認められています。

どちらの場合も家庭裁判所で所定の手続きをしなければなりません。
また、今回のケースのように、債権者のなかには遺族に相続放棄をさせないよう、わざと請求を遅らす悪質な者もいるので注意が必要です。

相続放棄は、借金もなくなる代わりに預金や株などの有価証券、不動産も残りません。
また、生命保険や年金が受け取れなくなることを心配して、相続放棄に踏み切れないという話をよく聞きますが、死亡保険金も年金もそれを受け取る人の財産であって相続財産ではありません。
したがって、相続放棄しても受け取る権利を失うことはないのです。

熟慮期間(3 カ月)に、負の財産(借金、保証債務)の確認をしっかり行うことが重要です。