Archive for 2014年3月27日

おじいちゃんの真意は如何に!?

「相続ミステリー おじいちゃんの真意は如何に!?」
━2つの遺言書が残したもの━

「この遺言書は有効ではないわ。私はこれよりも新しい遺言書を持っている。」

突然の三女の言葉。姉妹に入る亀裂の音。残念ながら、争続の始まりです。

数ヶ月前のこと、おじいちゃんが亡くなりました。93歳。地主で資産家です。
相続人は長男と3人姉妹の合計4人です。
奥様(おばあちゃん)は既に亡くなっていましたので、残された子供たちで遺産分割協議が始まりました。

おじいちゃんは、遺言書を残していましたので、それに基づき、長男が粛々と遺産分割協議書案を作成し、皆を集めて、遺産分割協議書と遺言書を見せながら話を始めようとしたその時、三女が言ったのが冒頭の一節。

一同静まり返りましたが、話は続けられました。
三女が持っていた遺言書は確かにおじいちゃんが書いたものです。
そしてその内容は三女が相続財産のほぼ半分を取得する旨が記載されていたのです。

長男が持っていた遺言書とは大きく中身が異なるものでした。
もちろんこの遺言書もおじいちゃんが書いたと分かるものです。

遺言書が複数出てきた場合は、日付の新しいものが優先されると法律で決まっています。
ただ、三女が持っていた遺言書。
日付の部分だけ筆跡が微妙に怪しかったのです。

結局、遺産分割の話し合いはまとまらず、裁判になってしまいました。
裁判中にわかったことですが、三女は、頻繁に入院中のおじいちゃんを訪ね、
そこで長男が持っていた遺言書を、事前に見てしまったようです。

その後、自分に有利な状況を作るために、おじいちゃんに取り入って、第2の遺言書を書かせたらしいのです。

最終的には判決が出て、三女が準備した遺言書(第2の遺言書)は認められないことになり、遺産分割は当初の案の通りに行われました。

おじいちゃんの2つの遺言書。
亡くなった今、真意は分かりませんがそれが残したもの。
判決が出て相続財産は分けられましたが、分割できない重たい空気を子供達に残してしまったのです。

この案件、メインは姉妹の争続でした。
女性同士というのは、話合いがまとまりにくいことが多いようです。
この事例以外でも、遺産分割における女性同士の戦いをよく耳にします。
今回の事例は、ちょっとミステリーっぽく遺言書が2通出てきたことでの揉め事でした。
どうすればいいか?遺言書は2通書かないこと。
気が変わって新しいものを書けば、古いものを破棄することです。
またここでは詳しく書きませんが、遺言書はきっちり作らないと、他にも揉める可能性がいっぱいあります。
そこで少々面倒かも知れませんが、作成した遺言書は、ご自身が信頼できる弁護士に見て貰って、最終的にその弁護士に預けるなどしておいた方が良いと思われます。

 

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相続金額を決めるのはいつだったのか

「相続金額を決めるのはいつだったのか」

━介護の果てに向かえた大きな亀裂━

相続は、相続税がかかる人だけの問題かと、タカをくくっている方はいませんか?
とんでもありません。相続は、私たち全員に関係する大切な問題です。
今回は、相続が原因で兄弟が仲違いをしてしまったごくごく普通の家族のお話しをしましょう。

70 歳になるH さんには、長女M さん、次女K さん、三女A さんの3 人の娘がおりました。
全員が嫁ぎ、孫にも恵まれて、幸せな生活をしておりました。
でも、寄る年波には勝てず、H さんは75歳のときに近所に住んでいた長女M さん一家と相談し、自宅を改築して、長女M さん家族と同居することにしました。

H さんは同居を始めた最初のお正月に、H さんは娘を全員集め、全財産の3,000万円につき、自分の死後、M さん、K さん、A さんの3 人で1,000 万円ずつ分けるようにと言いました。

その後、90 歳でH さんは大往生を遂げたのですが、80 歳くらいまでは歌舞伎が好きで、毎月5万円を超える金額を観劇に使っていました。
また、80 歳を超えるころからH さんは、認知症を患い、同居していたM さんも、介護の日々が続きました。
毎月、15 万円くらいの医療費が嵩み、亡くなる前には、H さんが持っていた3,000 万円の現金は、500 万円くらいに減っておりました。
H さんのお金の管理は、M さんが行っており、K さんやA さんに対しては、生計が別ということもあり、Hさんの預金の減り具合までは話していませんでし。
そんな中で、H さんの財産はほとんど残っていない状態になったのです。

H さんの四十九日後、K さんとA さんからの求めで、M さんは遺産の状況を説明しました。
初めてM さんからH さんの財産の状態を聞いたK さんとA さんは、M さんの説明を疑いました。
それどころか、H さんから口頭で聞いた1,000 万円につき、自分たちに権利があると主張をし、M さんが自分たちの貰うはずだった財産を生活費に使ってしまったのではないかとM さんを非難し始めたのです。
M さんも、介護の日々に疲れて、H さんの財産の使い道を詳細に記録していなかったこともあり、妹たちに感情的な対応をしてしまいました。
M さんは、K さんやA さんに対して、「K さんとA さんは親の介護もしていないのに、20 年も昔の財産に対する権利ばかり主張をする」と避難し、K さんとA さんはスクラムを組んで、「M さんが介護にことつけて親の財産を勝手に使い込んだのは許せない」と、近所にビラでばらまいて、お互いに主張を激化させてしまったのです。

結局、弁護士を入れましたが、長女と次女・三女との関係は元には戻りませんでした。
なぜこうなってしまったのか、原因を考えますと、遺産分割の仕方を、親の生前に、兄弟間で理解し合うことなく、お互いに自分に都合の良いように考えていたことに尽きるでしょう。
財産の多寡に拘わらず、関係者間のコミュニケーションを密にしておくことが大切なのだと痛感した案件でした。

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