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相続金額を決めるのはいつだったのか

「相続金額を決めるのはいつだったのか」

━介護の果てに向かえた大きな亀裂━

相続は、相続税がかかる人だけの問題かと、タカをくくっている方はいませんか?
とんでもありません。相続は、私たち全員に関係する大切な問題です。
今回は、相続が原因で兄弟が仲違いをしてしまったごくごく普通の家族のお話しをしましょう。

70 歳になるH さんには、長女M さん、次女K さん、三女A さんの3 人の娘がおりました。
全員が嫁ぎ、孫にも恵まれて、幸せな生活をしておりました。
でも、寄る年波には勝てず、H さんは75歳のときに近所に住んでいた長女M さん一家と相談し、自宅を改築して、長女M さん家族と同居することにしました。

H さんは同居を始めた最初のお正月に、H さんは娘を全員集め、全財産の3,000万円につき、自分の死後、M さん、K さん、A さんの3 人で1,000 万円ずつ分けるようにと言いました。

その後、90 歳でH さんは大往生を遂げたのですが、80 歳くらいまでは歌舞伎が好きで、毎月5万円を超える金額を観劇に使っていました。
また、80 歳を超えるころからH さんは、認知症を患い、同居していたM さんも、介護の日々が続きました。
毎月、15 万円くらいの医療費が嵩み、亡くなる前には、H さんが持っていた3,000 万円の現金は、500 万円くらいに減っておりました。
H さんのお金の管理は、M さんが行っており、K さんやA さんに対しては、生計が別ということもあり、Hさんの預金の減り具合までは話していませんでし。
そんな中で、H さんの財産はほとんど残っていない状態になったのです。

H さんの四十九日後、K さんとA さんからの求めで、M さんは遺産の状況を説明しました。
初めてM さんからH さんの財産の状態を聞いたK さんとA さんは、M さんの説明を疑いました。
それどころか、H さんから口頭で聞いた1,000 万円につき、自分たちに権利があると主張をし、M さんが自分たちの貰うはずだった財産を生活費に使ってしまったのではないかとM さんを非難し始めたのです。
M さんも、介護の日々に疲れて、H さんの財産の使い道を詳細に記録していなかったこともあり、妹たちに感情的な対応をしてしまいました。
M さんは、K さんやA さんに対して、「K さんとA さんは親の介護もしていないのに、20 年も昔の財産に対する権利ばかり主張をする」と避難し、K さんとA さんはスクラムを組んで、「M さんが介護にことつけて親の財産を勝手に使い込んだのは許せない」と、近所にビラでばらまいて、お互いに主張を激化させてしまったのです。

結局、弁護士を入れましたが、長女と次女・三女との関係は元には戻りませんでした。
なぜこうなってしまったのか、原因を考えますと、遺産分割の仕方を、親の生前に、兄弟間で理解し合うことなく、お互いに自分に都合の良いように考えていたことに尽きるでしょう。
財産の多寡に拘わらず、関係者間のコミュニケーションを密にしておくことが大切なのだと痛感した案件でした。

【長公認会計士事務所の相続・事業承継のページ】

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