Archive for 2014年4月21日

2次相続に注意

━配偶者の死亡も考慮して、相続税の軽減を━

両親と子供3 人のいる家庭で起こった相続の問題です。
父親が先に亡くなり、母親がその2 年後に亡くなりました。
父親が死亡した際には、母親自身が相続税の申告をしたそうです。

この時、父親の相続財産が約2 億7,000 万円で、相続税を出来るだけ減らすために配偶者の税額軽減を最大限に利用しようと考えたようです。
そして、配偶者に約1 億3,000万円を相続させました。
それにより、その時の相続税の総額は約1,500 万円程度で済みました。

しかし、その2 年後に母親が亡くなるのですが、母親には元々1 億円の財産があり、それに夫から引き継いだ財産1 億3,000 万円が加算され、総額で2 億3,000 千万円の相続財産となっていました。
そのため、この母親の相続では約2,700 万円の相続税を払うことになり、結局父親の時の相続税1,500 万円を合算すると、約4,200 万円の相続税を払う結果となりました。

もし父親の相続の時に、母親が約400 万円しか相続しなかったとしたら、父親の相続では3,000 万円程度の相続税を支払うことになるのですが、母親の相続の時には300 万円程度の相続税となり、両親を合算しても3,300 万円程度の相続税となっていました。
結果として、最初の相続税を出来るだけ少なくしようとしたために、総額で1 千万円近く多く納税する羽目になってしまったのです。

配偶者には税額軽減措置があり、それを利用することで当面の相続税を減らすことが出来きます。
しかし、今回のケースのように、配偶者に多くの財産を相続させてしまうとそれだけ配偶者の財産を増加させ、結果として配偶者の死亡時の相続税を多くしてしまう現象が起こってしまうのです。

どの程度を配偶者に相続させるのが最適かはケースによって異なるので、事前に専門家に依頼しシミュレーションをしてもらっておくと良いでしょう。

 

【長公認会計士事務所の相続・事業承継のページ】

http://www.chou-acctg.com/chou-souzoku.com/

 

妻名義の預金相続

「妻名義の預金相続」

━相続財産形成の合理性━

ある学園の学校監査をしていた関係で、その学校法人の事務局長から特殊な相続の相談を受けました。

その学校の用務員さん(以下「夫」とする)の奥様(以下「妻」とする)が亡くなり、「夫」が「妻」の遺産を相続する申告事例の考え方で悩んでいるようでした。

問題は、被相続人である「妻」の財産(預金)の多さ(約1 億円)にありました。

「妻」も「夫」と長年一緒に住み込みで用務員さんとして仲良く働いていたのですが、働いていた期間は「夫」より短く、特別に相続した財産もありませんでした。

実は「夫」は自分の稼いだかなりの部分をコツコツと「妻」名義の預金にしていたのです。

 

通常の場合は、男性が女性より早く亡くなるため、相続税申告をする際に、被相続人である夫の名義の預金に加えて、相続人である妻の名義の預金の一部を追加することがあります。

名義は妻であるけれど、実は夫の稼いだ財産と判断して相続財産に入れるわけです。

事例では、その逆に、妻名義の相続財産から夫が稼いだ分を控除するべきではないかという悩みでした。

確かに、相続財産形成の合理性の観点からはそうすべきと考えますが、その算定方法の合理性については立証挙証責任を伴う可能性もあり、その時点で把握できた過去勤務年数や給与データだけでは数字を決定しづらい事例でした。

また、当初、相続関係図を見ただけでは、被相続人「妻」と相続人「夫」だけのシンプルな相続であり、配偶者の税額軽減(1 億6,000 万円)の制度を利用すれば、妻名義預金を減額調整せずとも相続税額ゼロで問題ないと考えていました。

ところが、司法書士が戸籍を調査すると、「妻」は再婚で、前の夫との間に子供(以下「子」とする)がいることが判明、遺産分割協議書の作成が必要になりました。

幸い、今回のケースでは、「子」に連絡し、相続財産形成の事情等を説明したところ、「母には感謝している。」との一言だけで、その後は問題なく「夫」に相続財産が分割される結果となり安堵した記憶があります。

 

今回の教訓として、被相続人の相続財産はこれで適切なんだということを第三者に説明できるようにしておくこと、とりわけ預金については、年々どのような所得を源泉として増加しているか説明できるよう、名義を問わずに文書や記録に残していくことが特に重要であると感じました。

 

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