税務調査での ああ勘違い 相続税は亡くなられた方(被相続人)の財産を相続した人に係る税金です。 税額は「被相続人の財産がどれだけあるか」「誰がどれだけ相続するか」で個人毎に決まります。 これだけ言うと簡単そうですが、実際に計算しようとするといくつも頭を悩ませることが出てきます。 そのひとつが名義預金。子どもや孫名義で貯めている預金のことです。 これは相続財産になるのでしょうか? 被相続人がその預金を自由に使える状態であったなら、相続財産になるでしょう。 ただこの「自由に使える状態であったかどうか」は後からでは中々分かりにくいこともあります。 少し前置きが長くなりましたが、今回の事例は、状況の説明だけで相続税の扱いが変わることと、その結果の修正申告の内容についてお話します。 舞台は相続税の調査現場です。申告内容は次の通り。 被相続人はA。相続人はB(長男)とC(次男)の二人。 遺産総額3 億円。遺言あり。 商売を引き継いだBが9 割の財産を、Aと衝突ばかりして定職にもついていなかったCは1 割の財産を相続。 ただAはCの心配もしていたようで、ずっと昔からC名義の預金をしていました。 その額1,000 万円。その預金は今回の相続税の申告には含めないで、Cがそのまま持っていったようです。 BとCはあまり仲がよくありません。調査は調査官とBとの間で行われました。 調査官 「この1,000 万円の預金はどこに保管されていましたか?」 B 「父が管理していた金庫の中に保管されていました」 調査官 「え、じゃ名義預金で相続財産になりますよね」 B 「はい。そうなると思います」 BはCが相続財産にしないで、この預金を持っていったことに納得いってなかったのでしょう。 Cに税金を払わせようとわざわざ調査官に上記の説明をしたのです。 調査はこの1,000 万円の名義預金が抜けていたこと以外は問題なしとなりました。 したがって、Bは修正申告に掛る税金は全てCが支払うことになると思っていたようです。 ところがこれは間違いです。 相続税はまず全体の相続財産の金額で相続税の総額を計算しその後、各々実際に相続した財産の金額で、この総額を按分して個々人の相続税額を計算します。 したがって、今回この1,000 万円の名義預金の追加により増額した相続税は、Cだけに掛るのではなく、もともと9 割の財産を相続しているBに大きく掛ってくるのです。 相続税額の計算構造を理解していなかったBにとっては晴天の霹靂だったかも知れませんが、時すでに遅しです。 罠を仕掛けるなら構造を理解してからにしないといけません。 いえいえ、Bは9 割の財産を相続しているのですから、Cに対してもっと寛大な気持ちがあればよかったのかも知れません。 ただ、この修正申告の内容が正しいことも忘れずにお願いします。
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