Archive for 2014年5月10日

子供のいない夫婦の相続トラブル

思わぬ法定相続人の存在

定年を間近に控え、夫(次郎さん)が突然心臓疾患で亡くなりました。
まだ、58 歳でした。
夫婦共働きで収入も多く、子供はなく周囲が羨む仲良し夫婦。
優雅な生活を送っていると思われていた2 人ですが、実は数年前に家を建てた時、貯金のほとんどをつぎ込んでしまい、手元にはわずかしか残っていません。

それでも、まだ互いに現役で働いており、なにより好きな古民家を移築した終の棲家での暮らしは幸せなものでした。
日頃から一生懸命働いて築き上げてきた夫婦ふたりの財産は、すべてを残った方が相続して、自由に使おうとと話し合っていました。

しかし、次郎さんの急死で、思い描いていた定年後のプランはあっけなく崩れ、悲しみに打ちひしがれている妻・花子さん(50 歳)を新たな悲劇が襲います。

唯一の財産は、夫婦の共有名義で建てた自宅の古民家。
蓄えはわずかで、夫の遺族年金があるものの収入は激減し、老後が不安です。

花子さんたちには子どもはなく、夫の両親もすでに他界。
遺産は、当然自分が受け継ぐものだと思っていました。

ところが、知り合いの司法書士に尋ねると、花子さんの場合、夫の兄弟姉妹にも相続権があるといいます。

つまり、夫の妹・夏子さん(46 歳)8 分の1、既に死亡している夫の兄・太郎さんの子どもふたり(甥・秋男32 歳と姪・冬子29 歳)が代襲相続人としてそれぞれ16 分の1 の法定相続分があるということでした。

しかし、これまで親戚付き合いもほとんどなく、夫婦の財産を作りあげる上でも協力や援助を全く受けたことがありません。
甥や姪とは、もう何十年も顔を合わせたことすらないのです。

自分の老後のこともあるし、事情を説明すれば理解して相続放棄してくれるものと考えていた妻・花子さん。
相続放棄の書類を持って訪ねたところ、あっさり断られてしまいました。
若い甥や姪は「権利があるのにどうして放棄しなきゃいけないの?」「もらえるものはもらわなきゃ損」と主張。
当初は、納得していた義妹の夏子さんも口裏を会わせ、相続分を請求してきました。

民法上は、子どものいない夫婦のどちらかが亡くなった場合、亡くなった方の親または兄弟姉妹も法定相続人になります。

親が生きているなら法定相続分は、妻が3 分の2、親が3 分の1。
親がいなければ妻4 分の3、兄弟姉妹4 分の1 となります。
今回のケースのように、配偶者が住んでいるマイホームが唯一の財産であっても、兄弟姉妹にも法定相続分があるため、兄弟姉妹が納得しない場合には、家を処分して、相続分にあたる現金を用意しなくてはなりません。

子供がいない場合、双方の親がすでに亡くなっている場合でも、兄弟等も法定相続人になるということを念頭において、相続財産のあり方を考えていく必要があります。

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