相続対策を検討する場合には、贈与を活用するケースがあります。
でも、上手にやらないと、とんでもない結果に陥ることになります。
実例をお話しましょう。
Aさんは、上場企業のサラリーマンをしていますが、亡くなったお父さんから受け継いだ多額の上場株式を保有しています。
Aさんのお母さんも先祖から受け継いだ土地や有価証券をたくさん保有し、相続が発生すると、多額の相続税が課税されることが想定されます。
お父さんの相続時に痛い目にあったAさんは、お母さんの相続財産を少しでも減らそうと思い、お母さんの預貯金を生前にまとめて贈与してもらうことにしました。
生前贈与を受ける場合、通常、高い贈与税が課税されてしまいます。
そこで、Aさんは、自分で住宅を取得し、そのための資金をお母さんに贈与して貰うことを考えました。
実は、贈与税には住宅取得資金等非課税特例という制度があり、優良住宅を建築して、その資金を親に出してもらった場合、1,000万円までであれば、贈与税を免除されるという特例があるのです。
Aさんはこの制度を活用することで、1,000万円までの預貯金の贈与を無税で受けようと考えたのです。
この制度を活用するためには、贈与税の申告を行わなければなりません。
Aさんは、1,000万円の贈与を受けた上で、贈与税の申告書を作成し、税務署で申告書を提出しました。
ところが、贈与税申告書を提出してホッとしたのも束の間、Aさんは、税務署員に呼び止められ、信じられない一言を言われました。
この贈与税の非課税申告は認められないと言うのです。
慌てて「どうしてですか」と詰め寄るAさんに対し、税務署員はこう言い放ちました。
「だってAさん、あなたの所得は、2,000万円を超えているではないですか!」
そうなのです。
実は、この制度は、所得が2,000万円未満の人のみ、適用することが可能な制度だったのです。
Aさんはこの規定を知っていたのですが、自分が該当しているとは想定していませんでした。
毎年、サラリーマンとしての給与所得が800万円くらいだったからです。
しかし、アベノミクスの株価上昇の影響等で、この年のAさんは株式の売却を大量に行っており、譲渡所得が1,500万円くらいあったのです。
この年の所得が2,000万円を超えていたことに愕然としたAさん、結局、Aさんは、贈与税を納めざるを得ませんでした。
このように、相続対策で贈与を活用する場合には、適用用件が厳格に定められておりますので注意が必要です。
本件では、株の売却を翌年に回す等の対策を取ることで、所得を次年度以降に繰り延べるべきでした。
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