―団体信用保険に加入しているかを要確認―
「相続税の試算」などとして、顧問先の社長等から依頼され税額計算のシミュレーションを行う機会が増えていると思われます。その際にぜひ気を付けたいのが、住宅ローンの融資時に団体信用保険(団信)に加入していたかどうかです。
「(1) 団信に加入していた場合」と「(2) 団信でなく、標準保障額等に基づく一般の生命保険に加入していた場合」との課税関係は、それぞれ次のように異なります。
(1) 団信に加入していた場合
① 受け取った保険金
団信の契約者・保険金の受取人は金融機関であって、住宅ローンの契約者ではありません。そのため、「みなし相続財産」としての生命保険金等に該当しません。
② 住宅ローンの残債
団信契約に基づき被相続人の死亡により支払われる保険金によって補てんされることが確実であって、相続人が支払う必要のない債務であるから、相続税法第14条に規定する「確実な債務」に当たらないので、債務控除はできません。
(2) 団信でなく、標準保障額等に基づく一般の生命保険に加入していた場合
① 受け取った保険金
「みなし相続財産」としての生命保険金等に該当しますので、「生命保険金等の非課税(500万円×法定相続人の数)」の適用もあります。
② 住宅ローンの残債
当然ながら、債務控除の対象となります。
すなわち、団信に加入していた場合に、(1)①が相続財産の対象外・(1)②も債務控除の対象外のため、プラスマイナスでゼロの状態になり、住宅ローンで購入した物件は「債務なし」の状態で相続財産を構成することになります。
「あくまで試算だから」として、銀行が発行したローンの残高証明書や不動産所得の決算書の残高をそのまま債務控除の対象とすること(結果として、基礎控除の範囲内に収まって税額がかからない)は往々にあり得ると考えます。
しかし、そのシミュレーションを前提に相続税対策を行わなかったところ、相続開始後に「実は団信に加入していた」ことが明らかとなった場合、税金計算の上で文字どおり「後の祭り」になりかねません。