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葬儀費用は誰が負担するのか?

「葬儀費用は誰が負担するのか?」

~香典は誰のものか? 葬儀費用を負担すべき者は誰か?~

 

香典は、被相続人の葬儀に関連する出費に充当する事を目的として、葬儀の主宰者(喪主)になされた贈与の性質を有する金員であって遺産には属さないと解されています。(東京家裁判決昭和44年5月10日)

上記の判例に従うならば香典は葬儀の主宰者が贈与により受け取った金員であり、葬儀費用は香典の中から賄われるべきものであるということになります。

 

そして、これを受けて相続税法基本通達21の3-9 において「個人から受ける香典で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。」とされています。

 

ところで、香典では足りなかった葬儀費用は誰が負担しなければならないのでしょうか?

 

この点について平成24年3月29日名古屋高裁判決では葬儀費用は原則として葬儀の主宰者が負担すべきとしておりまた、その例外として①亡くなったものが予め自らの葬儀に関する契約の締結などをしている場合②相続人や関係者間で葬儀費用の負担についての合意がある場合の二つを述べています。

 

遺産分割協議が円滑に進行しない事案では香典や葬儀費用の取り扱いに関しても同様に争いとなるケースが少なからず見受けられます。

このような混乱を避けるためには葬儀の方法や内容、葬儀費用の負担方法について遺言書の中で定めておき、また必要ならば共済会等と葬儀に関する契約を執り行うことが有用であると言えます。