Archive for 2019年6月22日

特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除

特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除

 バブル時代、大昭和製紙社の齊藤了英氏が、ゴッホの「医師ガシェの肖像」やルノアールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を高額な値段で落札し、「死んだら棺桶に入れてもらうつもりだ」などと発言されたことがありました。当時「公開してくれないものかな」、その後も「いつか見たいものだ」と考えておりました。

 数年前、オルセー美術館で「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を間近で見ることができた時は「ここにいたのか」と感動しました。

 文化的価値の高い美術品を所有する方は、人類の預りものとはいえ、所有するために高額の対価を払い、一般の人々に鑑賞させてくれるのですから、感謝しなければなりません。

 世界的価値のある美術品にも金銭と同様の相続税を課税し納税を求めると、価値ある美術品が、行方不明になったり、海外流出してしまったりと、次世代に引き継がれないことも懸念されます。

1.制度の概要

 預託先美術館の設置者と特定美術品の寄託契約を締結し、認定保存活用計画に基づきその特定美術品をその寄託先美術館の設置者に寄託していた者(以下「相続人」といいます。)から相続又遺贈によりそのと特定美術品を取得した一定の相続人(以下、「寄託相続人」といいます。)が、その特定美術品の寄託先美術館の設置者への寄託を継続する場合には、その寄託相続人が納付すべき相続税のうち、その特定美術品に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、寄託相続人の死亡等により、納税が猶予されている相続税の納税が免除されます。

2.適用開始時期

 この特例は、平成31年4月1日以降に相続又は遺贈により取得する特定美術品に係る相続税について適用されます。

3.特定美術品

 この制度の対象となる「特定美術品」とは、認定保存活用啓確認に記載された次に掲げるものをいいます。

・重要文化財として指定された絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産

・登録有形文化財(建物を除きます。)のうち世界文化の見地から歴史上、芸術上又は学術上特に優れた価値を有するもの

4.相続開始前にすべきこと

 相続開始前に、被相続人が、特定美術品について、「寄託先美術館の設置者と寄託契約を締結し寄託していること」及び「文化財保護法の規

定に基づき保存活用計画に係る文化庁長官の認定を受けていること」が必要になります。

 相続開始後から相続税の申告期限まで、またその後の納税猶予期間中も重要な様々な手続きがあります。

5.納税猶予の期限到来

 次の場合には、猶予期限の到来となり猶予されている相続税と利子税を納付しなければなりません。

・譲渡(寄託先美術館の設置者へ贈与した場合を除きます。)した場合

・滅失(一定の災害による滅失を除きます。)、寄託先美術館において亡失もしくは盗み取られた場合

・寄託契約期間の終了した場合

・認定保存活用計画の認定が取り消された場合

・認定保存活用計画の計画期間満了後4か月を経過する日において新たな認定を受けていない場合

・重要文化財の指定が解除又は登録有形文化財の登録が抹消(一定の災害による滅失に基因する場合を除きます。)された場合

・寄託先美術館について、登録の取消等がされた場合

6.納税の免除

 次の場合には、免除届出書及び一定の書類を提出することにより、納税猶予されている相続税の納付が免除されます。

・寄託相続人の死亡した場合

・寄託先美術館の設置者に贈与した場合

・一定の災害により滅失した場合

 オルセー美術館にある「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」は、齊藤氏が購入したものとは別のものであったようです。(大小2枚がある。)齊藤氏が購入したものは、現在は海外のコレクターが所有されているようで、相続を要因としたわけではないのですが、日本には無いようですし、見ることはできそうにありません。

 



=====================
※相続のご相談なら長公認会計士事務所 まで

HPアドレス   http://www.chou-acctg.com
電   話  092-731-4640
=====================