受取人が先に死亡した生命保険

~子供のいない夫婦が掛けていた保険金の行方~

 

ある老夫婦が二人で仲睦まじく暮らしていました。この夫婦には子供はなく、夫Aには弟Bが、妻Xには姉Yがいました。Aの弟B夫婦は老夫婦の近くに住んでおり、老夫婦の晩年の世話をし、また老夫婦もBの子供をわが子のようにとても可愛がっており、将来は財産をこの甥っ子に渡したいと思っていました。一方、Xの姉Yは、遠方に住んでおり、この老夫婦とはほとんど接触はありませんでした。また、この夫婦は将来に備えて、夫Aが被保険者、妻Xが受取人の生命保険をかけていました。

時がたち、妻Xが病気で先に亡くなってしまいました。その葬儀から1ヶ月も経たない時に、今度は夫Aが事故で亡くなってしまったのです。夫Aの葬儀が終わった後、Aの弟Bが身辺整理をしているときに、夫Aが被保険者、妻Xが受取人の保険証券を発見しました。

Aの弟Bは、妻Xが先に亡くなっているので受取人の権利は消滅しその保険金はBのものだと主張し、Xの姉Yは、受取人は妻Xなのだから自分たちにも受け取る権利はあると主張しました。保険金は相続財産ではないのですが、ここでも「争続」が始まりました。

この場合、当該生命保険契約の約款にその定めがあればそれに従うのですが、無い場合には保険法の定めによります。そこでは、保険受取人が先に亡くなった場合には、その受取人の相続人が受け取るとなっており、この場合は夫Aと姉Yとなりますが、夫Aは亡くなったので、実際は夫Aの弟Bと姉Yとなります。ここで注意しなければならないのが、その割合で、法定相続割合で行くと夫A(弟B)が3/4、姉Yが1/4となるのですが、保険金の請求権は法定相続割合ではなく、均等割りだという最高裁判例があるというところです。よって、弟Bと姉Yはそれぞれ1/2ずつの保険金を受け取ることになります。

もし妻Xが亡くなった時に受取人を弟Bや甥っ子に変えていたならば、Aの保険金は姉Yに渡ることはなかったので、受取人の名義変更を失念すると思ってもないところに渡ることになるので注意が必要です。

 

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