預貯金も、遺産分割の対象に
昨年12月、最高裁は、相続財産の取り分を決める「遺産分割」の対象に
預貯金を含まないとしてきた判例を変更し、「預貯金は遺産分割の対象に含む」
という判断を示しました。
過去の判例では、預貯金は不動産や株式など他の財産とは関係なく、
法定相続割合に応じて相続人に振り分けるとしてきました。
今回、最高裁は、「遺産分割は相続人同士の実質的な公平を図るものであり、
出来る限り幅広い財産を対象とするのが望ましい」としたうえで、「預貯金は
遺産分割の対象とするのが相当」と結論づけました。
この変更によれば、例えば、「兄は土地、建物等の不動産、弟は預貯金全額」
といった分割や、特定の相続人に多額の生前贈与があった場合の不公平な遺産分
割の解消につながるとされています。
一方で、この変更により、死亡直後に相続人が葬儀費用等に必要な、まとまっ
た資金を被相続人の預金から引き出す場合や、相続人が当面の生活に必要な資金
を引き出すケースで影響が出てきます。これまでの判例に従えば、遺産分割
をしなくても自分の法定相続分は引き出し可能だったからです。
このような場合、相続人からの引き出し要請に応じるかどうかは金融機関や
支店によって分かれるところでありますが、ある相続人の要請に応じて預金を
引き出したことで、他の相続人から訴えられることも想定して、基本的には
「相続人全員の合意がない限り引き出しには応じない」方向のようです。
これまでも、相続の手続き上、被相続人の預貯金を引き出す場合、まずは、
相続人間で預貯金だけの遺産分割協議書を作成して、その分割書通りの預貯金の
引き出し、移転が行われる場合が多いですが、預貯金のみの分割協議がまとまら
ない場合には、預貯金を引き出せない状態が長く続く可能性もあります。
その解決方法として、家庭裁判所の審判より簡易な手続きで金融機関へ
仮払いを申し立てる「保全処分」が検討されています。
いずれにしても、緊急に預貯金の引き出しが必要な場合には、まず、
預貯金だけでもスムーズに分割協議がなされることが重要になってまいります。
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