増える役員人事への反対票
今年は6月29日に、3月期決算の上場企業の株主総会がピークを迎えました。これまでの上場企業は、株主総会の開催日を集中させることによって、出席する株主の数をコントロールしようという傾向が見られましたが、最近は企業統治への機運が高まり、株主が総会に参加しやすくなる分散開催が進み、昨今の株主総会では、役員人事への賛成票を投じる率が低下しているという傾向が見られます。
どういった株主が反対票を投じているのでしょうか。
端的に言えば、上場株式の保有比率が他の一般株主(個人株主)に比べて高い機関投資家による議決権行使が大きく影響しているのではないかと思われます。
機関投資家が望むROE(自己資本利益率)を向上させる、しかも持続的に向上させることは、一朝一夕にできることではありません。それどころか、日本企業のROEは、2015年度に2年連続で低下して7.7%であり、米国企業の12.0%に比べてかなり低い水準にあるとの調査結果もあります(2016年6月23日付け日本経済新聞朝刊17面)。
このような状況から、機関投資家が、取締役の選任議案に対する反対の議決権を行使するなどしたためではないかと言われており、このような機関投資家の影響力の大きさは、今後、ますます強くなることはあっても、弱くなることはないと予想されます。
従前のように、株式の持合いの下での「物言わぬ株主」や「与党株主」に、会社が頼ることができない状況にあることは明らかであり、特に、ROEが好転しない限りは、(経営トップである)取締役の選任議案について、反対率が上昇する傾向は今後も続くと見込まれます。
会社側としては、取締役、しかも経営トップである取締役の選任についての議案が否決・撤回されるという「想定外」の事態は、何としても避けなければならないので、好むと好まざるとにかかわらず、ROEの改善に努めて行くことになるのではないでしょうか。
山 﨑
(記事)【所員:山崎】
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