氣づき通信 平成28年01月特別

無題

 

平成28年度税制改正
平成28年度税制改正を一通り見てみますと、アベノミクスの新3本の矢へ対応したものとされています。しかし、私の目には官僚主体で今まで残されていたものを一気に整理をつけたというような形にしか見えません。
消費税の軽減税率の問題に政治家は労力を割かれたように思えます。その中でも経営者の方々に関心をもってもらいたい事の概要を紹介していきます。
文字通り、経営者として知って頂きたい事を中心にポイントだけ説明いたしますので、実際の取扱いにつきましては当事務所担当者にご確認をお願いします。

∞ ∞ ∞ 法人税関係 ∞ ∞ ∞
1.法人税の実効税率の引き下げ
成長志向の法人税制改革、法人実効税率20%代への引下げとマスコミ等では報道されています。しかし、これは笑い話みたいな形があります。
資本金1億円超の大企業についての法人税の税率は引き下げるが、大企業が納める税額そのものは基本的には同じにするという考え方にたっています。
従って、大企業の利益にかかる税率は形式上下がるのですが、大企業が負担する税額は全体としては一緒になります。
法人の利益に課税される税金は、法人税・住民税の法人税割・事業税・法人特別税など色々あります。それらを併せて実際、利益に対して最終的に何%払うのかという事を実効税率とよびます。
これが次のように変わっていきます。
[大企業]
実効税率 800万円以上の部分
法人税率
平成27年度 32.11% 23.9%
平成28年度 29.97% 23.4%
平成29年度 29.97% 23.4%
平成30年度 29.74% 23.2%
[中小企業 法人税の税率]
実効税率 800万円以上の部分
法人税率
平成27年度 34.33% 23.9%
平成28年度 33.8% 23.4%
平成29年度 33.8% 23.4%
平成30年度 33.59% 23.2%

大企業の表面上の税率は下がりますが、税額が減らないように色々税法上のルールを変える事によって対応しているのです。
大企業において特に大きな影響をもつのは事業税の外形標準課税と呼ばれているものです。これは単純にいえば資本金の額や従業員に払う給与の額等についても一定の比率で税金をかける訳ですが、この部分をより高くすることによって利益そのものにかかる税率は下がるのだが大企業の納める税収は一定にしようという背景があります。あまり期待しない方がいいと思います。
なお、資本金1億円以下の中小企業においては、実効税率は全く一緒です。
2.生産性向上設備投資促進税制
当初の予定通り、平成28年3月末で縮減、及び平成29年3月末で廃止する。
企業に急いで設備投資をさせるために、期限を延長しないとのことです。
3.減価償却制度(個人も同じ)
現在 平成28年4月以降取得
建物 定額法 定額法
建物付属設備
構築物 定率法
定額法 定額法

付属設備構築物については平成28年4月以降取得分については定額法しか認められなくなります。定率法の方が早目に減価償却費を計算できますので税金の支払を抑えることが出来ますが長期間では同じ税額になるとされています。
4.従業員が1000人以上の中小企業について
以下の特例が認められなくなります。
・少額減価償却資産(10万~30万円)の固定資産を年300万円まで取得時に経費とする制度

5.地方創生関連
①雇用促進税制(従業員の増加に対応する税額控除)の縮減、厳格化
東京や大阪などの事業所を除き、雇用開発促進地域に限定。
この雇用開発促進地域に福岡市を除く全九州が含まれます。福岡市内の事業所での従業員
の増加は対象者数から除かれます。

②企業版ふるさと納税(地方創生)
地方公共団体が行う一定の事業について、法人が寄付した場合、従来、寄付金の34%程度
法人税等が減少していたものを、64%程度減少するようにする。本社所在地の地方公共団体
は対象外。

∞ ∞ ∞ 所得税関係-個人 ∞ ∞ ∞
1.相続空き家の3,000万円特別控除
被相続人の自宅が空き家となっている場合で、相続した相続人が居住せずに相続後3年の12月末までに譲渡した場合、一定の家屋とその敷地、または家屋取崩後の土地を譲渡するときは譲渡所得のうち3,000万円は課税の対象としない。最近、全国で問題にされてきている空き家問題への一つの回答です。
つまり、相続が起こるまで被相続人の自宅として使われていたが、その後相続が起きた後、誰も住んでいない家屋とその土地を売却する。しかも、その家屋が昭和56年以前の家屋(マンションは除く)の時には、3,000万円の特別控除をその譲渡所得から引いてあげるという制度です。

2.医療費控除制度の改正
医療費控除とは、年間の医療費が原則10万円を超えた場合のその超えた分を所得税の確定申告で所得から引いてあげるという制度です。医療費控除は一般のサラリーマンでも幅広く使われている制度であり、確定申告を行う大きな理由の一つでもあります。
平成29年度からは、この医療費控除制度にもう一つ別の医療費控除制度セルフメディケーション推進の為のスイッチOTC薬制度が導入されます。どちらか有利な方を医療費控除制度として使ってよいという制度です。
つまり、セルフメディケーションとは健康診断等の結果、スイッチOTC薬を薬局等で購入し用いた場合においてそのスイッチOTC薬の合計額が12,000円を超える場合に、その超える部分の金額(88,000円を限度として)医療費控除として用いていいという制度です。
スイッチOTC薬とは、要指導医薬品および一般医薬品のうち、医療用から転用された医薬品として薬局で買えるもの。即ち、健康保険の対象にならないものだそうです。単純に言えば、病院で薬をもらうのではなく、自分で薬を買って下さい。これらについては現行の医療費控除の対象になっていますが、現行の医療費控除では10万円を超えた部分しかなりません。これに対し、このスイッチOTC薬の場合は合計10万円以下であっても医療費控除として認めますよという趣旨の取扱いになっています。ただし、予防接種や健康診断、がん検診等のように医師の関与があるものに限られるとの事です。単純にいえば、医療保険を使ってほしくない、医療費を圧縮したいという目的が見え見えの制度です。
これは平成29年1月1日からの支出についての話ですから、病院や薬局ではこの制度について質問を受けた時に対応できるように準備しておく必要があるでしょう。
∞ ∞ ∞ 消費税関係 ∞ ∞ ∞
1.軽減税率
平成29年4月1日から消費税の税率が10%へ上がります。それにあわせて軽減税率制度が導入されます。
軽減税率の対象は、酒類と外食を除く飲食料品と新聞の定期購読料です。
インボイス方式はさらに4年後の平成33年4月1日からです。インボイス方式の話は、先のことなのでとりあえず考慮からはずします。
問題は軽減税率と通常の消費税率の区分が困難な事業者への対応をどうするのかということです。難しい問題です。

笑 い 話
税理士川柳
・賃上げの 記事読む所員を 見ないフリ
・番号を 持たず使わず 使わせず
・マイナンバー なければ誰か 困るのか
・良い客が 「去る」にならない 猿年を
笑い話
・近所の人が「お宅のお嬢さん、車を運転されてますな」と最近免許を取った娘の父親に言った。
「運転を覚えるのにどの位かかりました?」
娘の父親が、憮然として答えた。「2台半ですよ」

・夫婦ゲンカのとき、父が母に 「バカモノ!」と言うのを、間違って、「バケモノ!」と怒鳴ってしまった。
ケンカはさらにひどくなった。

・3歳の娘の目にゴミが入って痛がっていたので目薬をさしてやった。
『はいパチパチして』と言ったところ娘は目をつむったまま、手をパチパチしていた。

・阪急電車の中、3歳位の男の子がおしっこをしたがっている様子。
子供 「ママおしっこ」
ママ 「どうしてもっと早く言わへんのっ!」
すると子供は何を考えたのか、早口で「ママッおしっこ」。

税金より重い社会保険料
平成28年10月より大企業のパートタイマーの方への社会保険の適用範囲が拡大されます。
現状は、労働時間と労働日数が正社員のおおむね4分の3以上で加入することとなっていますが、従業員数501人以上の企業については、以下の4つの要件すべてを満たしていれば、パートタイマーでも社会保険に加入しなければならなくなります。

① 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
② 賃金の月額が88,000円以上であること
③ 勤務期間が1年以上見込まれること
④ 学生でないこと

なお、従業員500人以下の中小企業については、平成31年9月末までは免除されることになっています。

人を雇うと社会保険料が徴収されますが、会社がどのくらい負担されているかご存知ですか?基本的に会社と従業員で折半します。

卸売・小売業で給与を30万円支給した場合、社会保険料は約9万円(会社負担45,477円・個人負担43,377円)かかり、給与に対する割合は29.618%(会社15.159%、個人14.459%)となっています。

30万の給与を支給すれば、会社は35万負担しているということです。一人だけでみるとピンときませんが、10人雇用していれば、年間550万の社会保険料を納めていることになります。これはかなりの出費ですよね。

法人税も負担が重い感じがしますが、所得800万までであれば中小企業の実効税率は軽減されて23.2%であり、185万程度の負担となります。また、企業の約8割は赤字のため法人税を納付していないのが現状です。
社会保険料は、赤字であっても納付の義務は免除されないことを考えると、中小企業にとって一番重い負担は社会保険料になるのかもしれません。

毎月なにげなく引き落とされている社会保険料ですが、中小企業にとっては最も大きな負担となっています。もちろん従業員の方にとっても同じです。

今回の改正は、中小企業の適用は少し先になりますが、パートタイマーの方が無駄な社会保険料を納めなくていいように、今のうちからシフト等の見直しを行っておきましょう。
株主や地主さんからもマイナンバー
従業員のマイナンバーの取扱いについての話題はよく耳にしますが、株主や地主・大家からもマイナンバーの提供を受け、本人確認をする義務があることはご存知でしょうか?

◆「配当等の支払調書」に注意!
最も早くマイナンバーを収集しなければならない可能性があるものの1つが株主さんへ支払う配当のための「配当等の支払調書」です。

例えば、平成27年11月決算法人や10月決算法人(申告期限延長先)が28年1月以降に配当を行うと、支払確定日(又は支払日)から1か月以内に合計表とともに、税務署に対して配当等の支払調書(誰にいくら配当を払ったかの調書)の提出が要求され、ここにマイナンバーを記載します。
ただし、非上場企業の配当の場合、例えば、年1回 の配当支払で、その支払額が10万円以下であれば提出は不要とされています。

配当等の支払調書へのマイナンバーの記載は、上場会社の株主などは3年間の猶予規定が設けられていますが、
①証券会社等で継続的な取引が行われている一 定のもの(主に上場企業の配当)
②信託など支払事務委託をしているもの
に限られており、非上場企業の配当は株主が多数になる場合であっても、猶予規定はありません。
なお、①・②に該当する場合でも、28年以降に 新たに株主になる場合の猶予規定はありません。

◆年間15万円超なら地主や大家からも
同一の者に対する地代や家賃の支払いが年間15万円を超えるときは、「不動産の使用料等の支払調書」を借りている会社が税務署に提出することとなります。

この場合にも、地主や大家からマイナンバーを収集し本人確認が必要となります。第三者の場合、普段は顔を見ない人であることも多いでしょう。マイナンバーの収集・本人確認を誰がするかも今から検討したいところです。
なお、配当と異なり、税務署への提出は平成29年1月末までですので、余裕があります。

国税庁のQ&A では、マイナンバーの提供を受けられない場合の取扱いについて、支払調書は税務署に受理されるものの、「提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反ではないことを明確にしておいてください」と回答されています。
マイナンバーを無理に要求して人間関係をこわさないようにしましょう。

『経営者保証に関するガイドライン』の活用
平成26年から会社の借入金について、必要がなければ経営者の個人保証ははずしなさいという金融庁の方針が打ち出されました。
平成26年2月から平成27年の3月までの民間金融機関におけるガイドラインの活用実績を見てみましょう。

民間金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績
(平成26年2月~27年3月実績) (単位:件)
H26年2月~9月 H26年10月~27年3月 H26年2月~27年3月
累積件数
平均/月 平均/月
新規に無保証で融資した件数
(ABLを活用し、無保証で融資したものは除く) 72,666 9,083 65,469 10,912 138,135
経営者保証の代替的な融資手法を活用した件数 196 25 178 30 374
保証契約を解除した件数 13,280 1,660 10,095 1,683 23,375
合計 86,142 10,768 75,742 12,624 161,884

H26年2月~9月 H26年10月~27年3月 H26年2月~27年3月
累積件数
平均/月 平均/月
保証金額を減額した件数 8,572 1,072 6,576 1,096 15,148

H26年2月~9月 H26年10月~27年3月 H26年2月~27年3月
累積件数
平均/月 平均/月
メイン行としてガイドラインに基づく保証債務整理を成立させた件数 23 3 37 6 60

これを見ると既存の保証契約を解除した件数は1年間で2万3千件ほどです。この数値を見られてどう感じられるでしょうか?私はまだまだ少ないなという印象を受けました。(560機関合計で月2000件弱)

銀行の親分である金融庁が好業績で資産内容がいい会社の個人保証を外しなさいと音頭を取っているのですが、なかなか進んでおらず、それを促進させるためにわざわざこの実態を公表したのではないでしょうか?

社長にとって個人保証はなにより重いものであり、できればないほうが精神的に楽になれます。この厳しい経済環境の中で誰にもまねできない強固な事業基盤を築かれるというのは血のにじむような努力をされてきていると思います。

その一つのご褒美として個人保証を外してもらうということもアリなのではないでしょうか。
ただ、俺は個人保証があるから頑張れるという経営者の方にはお勧めできませんが…。

 

 

 

 

 

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