Archive for 相続税対策

再婚したご夫婦の相続について

―子どものためと思った財産が遠くへ―

最近では離婚も珍しくありませんので、相続のご相談に再婚されたご夫婦やその相続人の方々も来られます。
ご夫婦は子供さんに恵まれず、ご主人が亡くなられた直後に奥様が亡くなられました。先妻との間には子供二人がいましたが、後妻は先妻の子供たちとは養子縁組していませんでした。
ご主人の相続時に奥様がご主人の財産の2分の1を相続されましたが、直後に奥様が亡くなられたためご主人から相続した財産と奥様の財産の合計を後妻の相続人が相続することになりました。
奥様のご両親は既に亡くなっておられるので、奥様の兄弟姉妹と先に亡くなられた兄弟姉妹の代襲相続人である甥、姪が相続人になります。このケースでは、後妻の相続人は生存している後妻の姉妹2名と甥、姪6名の計8名でした。
そのためご主人の財産の多くがご主人とはあまり関係の無い奥様の甥、姪たちに相続されることになります。
また、奥様の生命保険金の死亡時受取人は先に亡くなったご主人のままになっていました。
保険金の受取人は次の様になりました。

① A社保険金 夫の息子2名

② B社保険金 夫の息子2名が2分の1と後妻の相続人の姉妹、甥、姪全員で残り2分の1

③ C社保険金 生存している後妻の姉妹

④ C社の特約還付金と生存給付金 後妻の相続人である兄弟姉妹と甥、姪

 

受取人が亡くなった後変更せずにそのままになっていることがよくありますが、保険会社の約款により受取人が全て異なってくることになりました。

亡くなった後の遺族の生活等を考えて加入する保険金が、本人の思いとは全く違う受取人により受け取られることになりかねません。
約款をよく確認して受取人の変更等が必要です。

 

法律的に有効な遺言

法律的に有効な遺言

―こんな遺言には気をつけて―

自分の死後、家族が揉めないように、遺産の相続を自分で決めたいと遺言を残したいと思っている人は少なくないと思います。

遺言というと、まず「自筆証書遺言」を思いつくでしょうが、以下のような問題が起こりやすいので、気をつけて下さい。

 

1.PC等活字で書かれた遺言書

財産を全て書き出し、それを誰に相続させるか、PCで明確な活字で書き連ねた遺言は残念ながら無効です。

遺言書は、公証人などを介さない場合、全文自筆で書く「自筆証書遺言」でなければならないのです。

日付と氏名も手書し、押印が必要です。

 

2.本人の遺言をビデオで撮影して記録

わかりやすくと遺言を話している自分を撮影しておく遺言も無効です。

危篤の場合や伝染病隔離者等でない限り、公証人を介さない遺言書はやはり「自筆証書遺言」しか認められないからです。

 

3.相続させたい不動産や預金などの記載が不明確

「自宅は同居している長女に、預貯金は次女に」も無効か、相続人の間では理解できるかもしれませんが、実際に名義書換する場合に第三者(法務局や銀行)では特定できないため手続が煩雑になります。

 

4.遺産は子供Aに「任せる」などの被相続人の意思が不明確 「私の死後、財産は長男に任せる」などの記載では、長男に相続させたいのか、相続に関する協議のイニシアティブを任せたいのか分からず、結局相続人全員で遺産分割協議をして遺産を分割することになります。

 

5.相続人に対して「与える」や「やる」という表現をしている 「自宅は長男に与え、預貯金は次男にやる」などの記載も、遺贈(遺言による贈与)と解釈される場合もあり、その場合は遺言執行者(遺言を被相続人の代理人として執行する)を選任するか、相続人全員から同意を得て、名義書換をすることになります。

 

もし遺言を残したい、遺言書を作成したいと思うのであれば、まずは一度専門家に相談することをお勧めします。

 

 

 

相続税における節税対策にかかる一考察

 

戦後の相続税節税対策の王道は、常に不動産による対策であったように思います。時価と評価額の差額が節税の対象であり、財産評価ルールが変わらない限り、今後も王道の地位はゆるがないでしょう。平成27年度には、相続税の最高税率とともに、基礎控除等も減額となり、資産家の相続税対策への関心が、また高まって来ました。

 

今回は、マンションを利用した節税について。

最近広島でも、広島駅周辺の再開発が進み、超高層マンションの建設もおこなわれ、販売も最上階の億ションから売れているそうです。

今まであまり関心がなかったのですが、マンションの場合、最上階も、1階も同じ規格であれば評価額はほぼ同じという事です。確かに区分所有の土地面積に差があるわけではなし、建築資材についても特に差があるわけではなさそうです。

但し、1階と最上階では、面積部屋の造作等のちがいもありますが、眺望とか、安全性とかも考慮すると、場合によっては、値段に数倍の差が出てもしかたないと思えます。相続後に売却すれば(購入時と売却時の時価にあまり差がなければですが。)相続税の節税額だけもうけになります。

財産評価ルールの変更がありそうだとのことですが、変更後、不動産の購入価額と評価額が同じになることはあり得ず、評価額が高くなれば、固定資産税も増加するのでこちらの調整も必要になります。

また高額のマンションを購入する人が相続税の節税目的とは限りません。場合によっては不当な課税を受ける可能性もあります。むしろ相続後5年以内の売却についてだけ、相続時の評価差額を認めないとする方が現実的ではないでしょうか。

 

 

最近の相続事情

最近の相続事情

~相続争いをなくすには~

 

近年、相続税の申告に際し、係争事件となるケースが増えてきているように思われます。

少し前までは、「相続でもめるほどの財産があれば」などとお金持ちの話で他人事のように思われていたのが今は身近な話に変わってきています。

「自分の子供に限って相続でもめるようなことはない。みんなでうまく分けてくれるよ」と、お父さんから伺って、遺言書を作らないでいた結果、後日お母さんが「どうしてこんなことになってしまったのか」とお嘆きになるケースも増えてきました。

その要因として、相続税の課税標準が引き下げられたことが挙げられるでしょう。さらに、相続財産に対する意識が一般に浸透してきていることも、一つの要因でしょう。

しかし一番の要因は、世代間のギャップかもしれません。一方で、団塊の世代といわれる年齢以上の人は、家社会の中で生活し、教育を受けてきました。

親兄弟・親戚の関係が強く世間体を大層気にする風潮が残っています。他方で、その後の世代は核家族の中、世間体をあまり気にしなくてよい環境で生活し、教育を受けてきました。その結果でしょうか、相続財産は子供(相続人)に法律で認められた、当然の権利であるという意識が強いように思われます。

いざ相続が始まると、このような旧世代の被相続人(親)と新世代の相続人(子供)の意識のギャップが、親子関係・兄弟の関係を悪くしてしまうのかもしれません。

自分が築いた財産を誰に相続させるかまで決めて、相続人に納得させておくことで、後の争いを無くし家族の平安が確保できます。遺言書を作るだけでは足りません。ご自身の意思をお子さんたちに納得させる迄が、相続させる側の務めです。納得することで、相続人となるお子さんのご両親に対する態度も今まで以上に良くなるかも知れません。遺言書は何度でも書き直しができます。

一番新しい日付のものが有効となります。状況の変化を考慮して書き直すことも必要です。

今一度、信頼できる公認会計士や税理士と共に、相続について考えてみて下さい。

 

 

 

空き家対策特別措置法

 

-空き家の固定資産税対策-

 

維持費用や固定資産税の負担を避けるため、住む予定のない実家などを相続放棄する相続人が急増し、この20年間で家庭裁判所への相続放棄の申立件数は約3倍に増え、2014年には18万2千件に達しました。相続放棄とは、預貯金や不動産などの相続権を失う代わりに、借金や売却が困難な不動産などを相続しなくても済む仕組みのことで、被相続人が亡くなったのを知ってから原則3カ月以内に相続人が家庭裁判所に申し立てる必要があります。相続放棄は、所有者不在で倒壊の危険がある空き家問題を深刻化させています。

 

空き家の主要増加要因にはその他に固定資産税の問題があります。

住宅用地には固定資産税の特例措置が設けられ、土地に係る固定資産税は建物が建っていれば本来の納税額(課税標準×1.4%)の1/6又は1/3に軽減されますが、建物を解体して更地にしてしまうと税の優遇措置が受けられず、空き家をそのまま放置しておいた方が税負担の上で有利だったのです。

 

管理されていない空き家が増加し、地域住民の生活環境に深刻な影響を与え社会問題化してきたことを背景に、2015年5月26日に空き家対策特別措置法が施行されました。自治体の権限を強化し、空き家への立入調査ができるようになり、倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空き家等何れかに該当する「特定空家」に認定された場合には、所有者に対して撤去・修繕などを指導・助言し、従わなければ命令できることになっています。

 

固定資産税は1月1日時点の所有者に納税義務が発生するため、「特定空家」

に注意しなければならないのは2016年以降ですが、収益を生み出す資産として空き家を活用したり、売却等で負債の根源を断つこと等を検討して、自己資産の防衛を図ることが必要です。