Archive for 2014年1月24日

間違った土地の相続対策

「間違った土地の相続対策」
━間違った相続対策が相続をより複雑にしてしまった事例━

親は出来るだけ3 人の子供(長女、次女、長男)に平等に相続したいと思ったようで、所有する3 箇所の土地のそれぞれに子供たちを住まわせ、次のように譲渡していました。

① 長女が住む土地は、1/3 を親名義で残したまま、残りを3 人の子供へ譲渡していました。
② 次女が住む土地も、1/3 を親名義で残したまま、残りを3 人の子供に譲渡していました。
③ 長男が住む土地は、親が株式を所有している会社名義としています。
ただし、この会社の一部は親の弟が株式を所有しており、相当の資産を保有しています。

この状態でもし相続が発生するとどうなるでしょうか。

親の持分について、①は長女、②は次女、③は長男という具合に上手く遺産を分割できたとしても、①、②の土地は兄弟姉妹での共有名義となったままで権利関係が複雑な状態が続きます。
また、③については親の弟が株式の一部を所有し続けている状態です。
親が生きているときには問題が生じなくても、いざ亡くなってしまうとお互いが自分の権利を主張し、その複雑な権利関係から問題がこじれてしまうことが多々あります。

この事例では、親は健在なので早速対策のやり直しに着手しました。
まず、子供達がそれぞれ住む土地はそこに住む子供のみの名義とし、かつ相続税と贈与税の合計が最も安くなるように、親子が納得したなかで贈与と遺産分割を実施しました。
また、親の弟が所有する株式についても適正価格での買い取りを実施しました。
この事例で難しかった点は、良かれと思って譲渡をした親を傷つけることなく、
やり直しをすることに納得してもらうことと、そもそも長女からの依頼だったのですが、その長女が自分だけ得をするようにやり始めたものではないと言う誤解を
他の兄弟姉妹に与えないようにすることでした。

このようにきちんと青写真が描けていない相続対策は問題を複雑にしたり、それを修正するのに非常に手間のかかるものとなるので注意が必要です。

共有名義の相続 – 遺産分割はシンプルに

親しくしている友人(以下「友人」とする)から相談がありました。

その「友人」の奥様(以下「妹」とする)が彼女のお兄様(以下「兄」とする)と相続の関係でもめて困っているとのことでした。
最初は、相続開始時の財産分割が問題となっているのかと思ったのですが、すでに相続は数年前に終わっており、主な相続財産である親の土地と建物(アパート)について、土地を「兄」と「妹」との共有名義にして、アパートは「兄」の名義に相続したとのことでした。

問題は、「兄」がそのアパートを建て替えることを計画して、その資金調達をする際に、アパートが建っている共有名義の土地を担保にして、「妹」にも保証人になるよう一方的に決めたことでした。
それまで「兄」の言うことは従順に聞いていた「妹」でしたが、理不尽な言いように夫である「友人」に不満を言うようになったわけです。

本来は、アパートが建っている土地は共有名義ですので、「妹」にも家賃収入の一部が得られたはずなのに一切無かった、相続の際も知らないうちに実印を押されて分割がなされた等の疑問が噴出したようでありました。
そのため、共有名義分だけ土地を処分したいとのことでしたが、もめた末、結局は「兄」に買い取ってもらうことになりました。
しかし、売却による譲渡所得税や弁護士費用等で財産的にはかなり目減りしました。
それ以上に、「兄」と「妹」の間が険悪になり通常の付き合いさえなくなってしまいました。

実際の相続の事情は正確には分かりませんが、亡くなった親は「兄」と「妹」仲良くやっていくよう土地を「兄」と「妹」との共有名義にするよう遺言したようです。

こういったことはよくある事例で、子供に平等に相続させ、いつまでも仲良く過ごして欲しい希望があったと思いますが、子供はそれぞれ新しい世帯を持つようになり独立していくものです。

共有名義という相続は何にせよ、会計事務所での実務経験上あまり好ましいとは思えません。

それではどうすればよいのでしょうか。
簡単な話、子供にはそれぞれ単独で財産を相続させるべきです。
複数の土地でしたらそれぞれ別の土地を、土地が一つしかなければ分筆をして、それぞれを「兄」と「妹」にシンプルに相続させるべきだったと思います。