気づき通信 平成31年03月企業

  

   

2019年10月稼働予定 地方税共通納税システム

[経理の合理化]

 法人税や所得税の世界では電子申告のシステムが完成しています。単純に言えば、インターネットを通じて税務申告が可能です。

 一方、地方税は、電子申告は可能ですが、納税についてはかなり困難でした。各市町村の振込用紙により指定取扱い銀行へ振り込まなければならなかったのです。

 eLTAX(地方税ポータルシステム)の機能を充実させて、地方税共通納税システムを今年10月より稼働させる予定です。eLTAXを用いて、税務申告だけでなく納税も行えるようになります。

 まとめれば、法人が地方税や事業税の申告書を複数の都道府県・市区町村に郵送ではなく、インターネットでまとめて送信しているのと同じように、税金の納付もインターネットで納付金額を直接伝送し、1箇所で納税できるようになります。納税そのものは、①1箇所の預金口座に銀行から送金する、②インターネットバンキングで送金、③予め金融機関口座を登録した上で、電子申告に基づいて自動振替による電子納税が行えるようになる予定です。

 特に経理事務の合理化になるのは給与計算です。

 会社は、従業員への年間源泉徴収票(給与支払報告書)を電子申告により市町村へ送付できるのに加え、毎月の給与から天引きする個人住民税(特別徴収分)を電子データ(特別徴収税額通知)をもらい、その天引きした地方税(地方徴収分)のデータをeLTAXに入力すれば、振替納税などで自動的に納税されます。

 今まで頭痛のたねだった銀行へ行き、各市町村へ地方税をまとめて納税するという業務から解放されますので、経理の合理化のために是非今年の10月以降利用しましょう。

地方税共通納税システムの対象税目

(稼働当初)  
(1)電子申告データと連動し納付する税目    ・法人都道府県民税  ・法人事業税  ・地方法人特別税  ・法人市町村民税  ・事業所税  ・個人住民税(退職所得に係る納入申告) (2)納税者が納付金額を直接入力し納付する税目    ・個人住民税(特別徴収分)※延滞金等含む  ・法人都道府県民税の見込納付 及び みなし納付  ・法人事業税の見込納付 及び みなし納付  ・地方法人税特別税の見込納付 及び みなし納付  ・法人市町村民税の見込納付 及び みなし納付  

 

 

   

所得税確定申告の季節に思うこと 雑所得の話

 所得税の確定申告の季節。税務当局はこと細かく税金を取ろうとルールを定めているものだと改めて感心します。

 競馬馬券の儲け

 競馬は相当の枚数の馬券を買って総合的に勝ち負けが決まると思っていましたが…。

 一般の人の馬券の儲け

 はずれ馬券の購入費用は経費にならず勝ち馬券のみの儲けにのみ所得税課税(一時所得)

 年間を通じて相当多数の馬券を購入し続けてだいたいいつも儲け続けたときに限り雑所得

 雑所得= 勝ち馬券の儲け-負け馬券の購入費

(雑所得の例)

 ・民泊収入による収入

 ・インターネットのオークションサイトでの個人販売

 ・仮想通貨の売却

 ・税務署からの還付加算金

 ただし、雑所得による赤字はなかったことにされ、他の所得と通算されません。

 雑所得とは、税法では、給与所得、譲渡所得・・・のいずれにも該当しない所得というとされていて本当になんでも税金をとる印象です。

 なお、公的年金も雑所得に法律上は区分されていますが、「なぜ雑所得の区分なのか」どうしても納得できません。自分の給与から天引きされたものを上乗せして会社が負担して国に払い、それが返ってきた分ではないのかな?

 

 

 

 

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気づき通信 平成31年02月企業

新社会人のための資産運用

 新社会人が心得ておくべき最も大切なことは、『自分の稼ぐ力への投資』です。

 具体的に言うと、仕事を早く覚えること、仕事に関連する知識やスキルを強化することに対して、自分の時間・お金を惜しみなく投入することです。自己投資に回すために資金をどう運用するか?は、新社会人にとって一番重要なことだと思います。

 「マネックス証券」が行ったアンケート調査によると、もし自分が新社会人だとしたら初任給を何に使うかという問いに対し、「投資・資産運用」が4位にランクインしています。

 また、いつから投資を始めたかったか?という問いに対しては、約8割が「未成年」もしくは「20代」と回答しています。

 その理由としては、「投資を始めるのが早ければ早いほど投資に対する意識が変わるのが早くなるため」や、「早めに少額でも投資しておけば、お金の余裕ができた年代にもう少し自己投資に積極的になれたと思うので」などが挙げられています。

 確かに、投資は自分も稼ぐ一方で金融資産も働かせることによって、二つの収益が生まれる態勢を作ることができ、資産運用法のメインテーマとも言えます。ただ、投資は自分のためにするものであり、銀行の口座に眠っているお金が投資に回ることで国や経済全体が元気になるとか、企業の株式に投資することでその企業を応援するといったことではなく、投資をする本人に、どうプラスになるかが重要なのです。

 また、どれだけプラスになるか?ということだけでなく、損をしてもいいと思える金額の計算をして、万が一の場合の対策も忘れてはいけません。それができずにリスクを直視できないような人は、投資を始めるべきではありません。

 よく言われる長期投資でリスクが縮小するというのは誤りで、長期であればあるほど自分の予測を忘れ、当たった場合のことをより多く覚えているため、実感として長期の方が当たりやすいように考えてしまうだけで、長期投資にリスク低減効果はありません。

 投資の他にも、運用益が非課税となる『つみたてNISA』や、掛け金が所得から控除されて所得税・住民税が節約できる『確定拠出年金』など、資産運用法は多々あります。

 人生の豊かさにおいて、自分の稼ぎを充実させることは重要なことです。そのための資産運用なのですが、運を用いると書くぐらいですから、運用に絶対はありません。

 今では、小学生でさえ投資をしている時代ではありますが、これほどまでにお金についての教育をタブーとしているのは、日本くらいだと私は思います。一番重要な自己投資にお金を回すために、あらゆる危険やリスクに対応できるようにあらかじめ資産運用の勉強をしていなければならないのです。 (記:池松)

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中小企業が求めている会計まわりのクラウドサービス

 10月中旬に東京で会計事務所博覧会に参加してきました。会計事務所向けの色々なソフトやサービスを提供している会社が展示ブースを設け説明会を行っています。

 最近の話題についてのパネルディスカッションも開かれていました。

 その中でマネーフォワードの辻社長が登場しました。

 マネーフォワードは東証マザーズ上場で売上45億円、当期損失7億円程度、5期連続41億円の赤字という業績ですが、増資を繰り返して純資産36億円という状況で近くさらに90億円の増資を行う予定でクラウド会計に挑戦し続けている会社です。

 世の中からは、クラウド会計が次の世界をひっぱるとして期待を集めている会社です。

 次々と買収を繰り返し、経営分析をする会社、自動仕訳システムを開発する会社などを買収してきましたが、今年の8月にスタートアップ段階の福岡市内の従業員4名の会社をグループ会社にしたと発表しました。

 その会社は、一般の中小企業に対して「クラウド会計(マネーフォワードやFreee)」等の財務会計ソフトの導入のお手伝い、指導、クラウドでの勤怠管理や給与ソフト導入の手伝い、「エアレジ」などの売上分析や会計のPOSレジアプリの導入など、いわゆるバックオフィスのソフト導入のお手伝い、それに補助金の申請などを行っているとのことです。

 辻社長の話によると、このようなニーズが特にスタートアップ期の社長に強いとのこと。

 考えてみれば、これと同じことを専業として行っているわけではありませんが、私どもの事務所でもとぎれとぎれに行っています。ここに新しいニーズがあるとは思いもつきませんでした。

 来年からは真剣に取組むべきサービスだなと思いました。

 ITの基本的な指導から始める必要がある会社も多いようですが。。。

 ただし、顧問先は一定の成長をされていますからお金がもらいにくいサービスであると危惧していますが。。。

来年のスケジュール カレンダーの問題

 来年の計画を立てられているお客様も多いことでしょう。

 来年のカレンダーと会社のスケジュールを計画するうえで特に頭がいたいのは、来年のゴールデンウィーク(4月27日(土)から5月6日(月)まで)の10連休問題です。

 1.社員の年間働く日を日数で決めている会社は、いつを休みにするかというだけの問題だけで、働く日数、労働時間が減るわけではありません。

 自社のまわりで見ていますと年間254~256日がおおいようです。

 一方、就業規則で土日及び国民の休日を休みとしている会社は、もろに働く日数、労働時間が減少します。生産性は落ちないでしょうか?

 2.仮に10連休中が休日となる会社が、仕事の関係で出勤してもらうと休日出勤手当の問題が生じます。

 3.給与計算の問題も生じる会社があります。

 一般の会社では、給与支払日が金融機関の休日に当たるときは、その前日に給与を支給すると定めている会社が多いようです。

 本来、翌月5日払いの会社(当事務所)では4月26日(金)が支給日になります。

 そして、給与の銀行振込みの銀行手数料を無料にするためには、さらにその3日前(4月23日)までには銀行の振込み手続が必要になります。

 銀行に関しては、10月9日から一部の金融機関を除き、24時間365日、他行あてでも即時振込することが可能になりました。ただ、総合振込や給与振込は対象外のようです。

 銀行の支店は10連休でしょう。

 これでは、あまり意味がありませんので、せめて来年の10連休のときだけでも解禁してもらいたいと思います。

 4.会社とは関係ありませんが、連休中現金が必要になってCDからお金をおろす人は、手数料がかかるのではないでしょうか。

 

御 挨 拶

 今年も1年間大変お世話になりました。

 新年も幸多き年でありますようお祈り申し上げます。

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気づき通信 平成30年11月企業

 

 

中小企業の社長が65歳から年金をもらう方法

 

年金のうち、老齢厚生年金は65歳から支給が原則です。

しかし、中小企業のオーナー社長で、65歳で退職し働かない人は少ないでしょう。

 

70歳までは働いている人(社長も含まれます)は、社会保険料(厚生年金保険料を含む)を払わねばなりません。実際は、会社が給与・賞与から天引きして納付します。

なお、70歳以上になれば厚生年金保険料は収める必要はありません。

 

一方、老齢厚生年金は、給与・賞与の平均額に応じて支給制限があります。

A支給停止額(月額)=(年金月額+月給+1年間の賞与÷12-46万円)÷2

 

単純に言えば、本来の年金支給予定額(月額)と給与・賞与との平均額(月額)の合計が46万円を超えていれば、その超えている額の半分の額が年金の支給停止額とされ、本来の年金月額から差し引かれて支給されます。

逆に言えば、今、本来もらえる年金の月額が25万円(年300万円・これはとても高い水準です)とすれば、月71万円以上の給与の社長は年金支給停止額が25万円となり老齢厚生年金はゼロとなります。

月100万円、年1,200万円の役員報酬をもらっている社長はよくみかけますが、年金をもらえないでしょう(70歳を超えても、この支給停止は変わりません。自分の給与から厚生年金を払わなくても良くなるだけです)。つまり、働くことへのペナルティです。

 

年金をもらう特別の方法もあります。

それは、Aの計算式でいう月額+1年間の賞与÷12が、実際の額ではなく賞与は1回150万円の頭うちで、仮に一度に1,000万円の賞与をもらったとしても150万円とみなすということです。

なぜかは私には分かりません。とにかく、このように社会保険庁が決めています。

 

とすると、月給を100万円、年収で1,200万円もらう社長は年金をもらえないが、月給8万円、賞与を年1回1,104万円もらう社長は年収1,200万円もらっても支給停止ゼロ。つまり年金を満額もらえます。

支給停止=(年金月額25万円+月給8万円+賞与年額150万円÷12-46万円)÷2=ゼロ

 

これは、社会保険の話です。

 

 

 

 

 

一方、所得税法人税の世界ではちがいます。

社長個人として役員報酬1,200万円もらえば1,200万円に対応した所得税がかかります。当然です。

 

法人税の世界では、毎月一定の役員報酬を支払う場合には、経費・損金になりますが、賞与を払う部分は経費・損金にならないというのが原則です。

ただし、事前に○月○日に役員賞与○○○円を、毎月の給与○○円を支払うという届出書を税務署に提出している場合には、全額経費・損金となります。

このことを正確に知りたい方は、顧問の社会保険労務士さんへお尋ねください。

 

年金はひたすら複雑に感じます。

 

「さらに一言」

厚生年金に加入している方は、65歳から年金をもらい始めるのが原則ですが、これが2つの種類の年金からなっています。

・老齢基礎年金(一般に国民年金と言われています)

月額6万円が最高

加入期間により異なる

・老齢厚生年金(在職中の給与水準によって金額が異なる)

 

支給制限があるのは、この老齢厚生年金の部分の話です。

 

ここをお間違えなく!!

つまり、老齢基礎年金は、とにかくもらう手続きを忘れないでください。

 

注)年金は65歳になったら自動的にもらえるのではなく、自分でもらう手続きをしないともらえません。

 

 

 

 

 

相続の話題

 

1.遺言書はどれくらいの人が作っているのだろうか?

 

「自筆遺言書」

家庭裁判所で相続発生後に確認を受けないといけないとされています。

そこで、家庭裁判所の統計を見ますと、2000年が1万件から2016年1万8000件に近づいているようです。

実際には、自筆証書遺言があっても、その遺言書どおりに財産を相続すると分割するためには、あえて遺言書の確認を受けずに、遺産分割協議書をつくれば良いわけですから、もう少し自筆証書遺言書は多いのではないでしょうか?

 

注)来年2019年から2020年にかけて、遺言書の作成方法、保管方法のルールが変わることになっています。もう少し、作りやすくなりそうです。

 

 

「公正証書遺言」

これは、公証人役場での作成件数(亡くなった人の公正遺言書の件数ではありません)は2016年は105千件、2017年は110千件となっています。

 

単純に2016年で見ると、自筆遺言証書と更生証書遺言を合わせて122千件、一方、2016年に亡くなられた方は約131万人ですから9%以上のケースで遺言書がありそうです。

 

 

2.身寄りのない人の相続財産は特別縁故者のもの 毎年400億円が国のものに

身寄りがない人が死亡し、財産の受け取り手がいない場合、家庭裁判所が利害関係人もしくは検察官の申立てで「相続財産管理人」を選任する。

管理人は被相続人の債権者に相続財産から弁済し、残りが国庫に納まることになるのが法律の定めです。最高裁判所によると、国庫に入る財産額は毎年400億円にもなるそうです。

 

ただし、相続人がいない状況でも必ずしも国に財産が移るわけでもありません。

相続人がいない被相続人の財産は、被相続人と生計を一緒にしていた人や介護・看病をしていた人などの「特別縁故者」に該当する人であれば受け取れます。代表的な特別縁故者は内縁の妻や夫です。裁判所に特別縁故者と認められれば則産を受け取ることが可能となります。

 

内閣府によると、ここ数年の婚姻数は毎年60万組台で推移しているといいます。第一次ベビーブーム世代が25歳前後の年齢を迎えた昭和45~49年の年間100万組と比べると、未婚率は大幅に上がっています。法律上の配偶者や子がいなければ財産が国のものになる可能性が高いので、遺言の作成や養子縁組などで財産の引き受け手を事前に決めておくのが賢明だと思います。

 

 

 

 

 

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所長のIT手習い そのⅠ「Googleフォト」

 

所長たる私は、iPhone、iPad、それにデスクトップパソコン(Windows)を用いて仕事をしています。プライベートでも多少それらを使っています。そのなかで見つけた無料や安いソフトを1つずつ紹介していきたいと思います。

 

皆様の方がよくご存知でしょうし、活用しておられると思いますが・・・。

うちの奥さんは知らないことが多いので念のために紹介していきます。うちの娘などは、本当によく知っていますので、娘から教えてもらっています。本当に若い人の理解力は素晴らしいと思います。

昔々、私の母親がどうしてもVTR(ビデオ)の予約の仕方が分からず、子供だった私がいつも代わりにVTRの予約をしてあげていたことを思い出してしまいます。

 

今回は第1回目です。

 

『Googleフォト』というソフトを紹介します。

 

Google(グーグル)という会社があります。今は持株会社アルファベットという会社に代わってGoogleは子会社になっています。

「Googleというインターネットの検索画面」でWeb検索をほとんどの方は利用されていることと思いますが、Googleは検索を通じて広告のターゲットデータを集めそれを利用して儲ける一方、Googleの検索を含めた多くのサービスを無償で提供してくれています。

その1つが「Googleフォト」です。

今の時代、写真はiPhoneなどのスマートフォン携帯やデジタルカメラで撮りますが、ほとんど物理的な写真は作成せずデジタルデータで保存しています。このデータを無料で保管しますよというのがGoogleの提供する「Googleフォト」です。

 

このソフトは、「クラウド」に写真のデジタルデータを保存し、いつでも手持ちのスマートフォン(iPhoneやAndroid)やiPad等のタブレット、デスクトップのパソコン(macやWindows)でも見ることができます。

一定の条件は付きますが写真の枚数は無制限ですし、Googleフォトのソフトをスマートフォン(iPhoneやAndroid)にダウンロードさえしておけば撮影した写真やビデオは自動的にクラウドにバックアップされ整理されるのでスマートフォンの容量が不足してきたときは、スマートフォンの中の写真データを削除して容量をあけることができます。勿論、クラウドにバックアップされた写真データは削除されませんので自由に見ることができます。

 

 

 

次に、どうすればこれを使えるのでしょうか?

 

 

デスクトップPCでGoogleの検索画面右上を押して、(風車のマーク)を押します。

AppleのiPhoneやiPad用のソフトはApple Storeから、Androidスマートフォンやタブレット用のソフトはGoogle Payからインストールできます。

 

また単に保管してくれるだけではなく、日付順や写真を写した場所別に、さらには写っている主な人別(顔写真で識別)にというようにアルバムを作ってくれたりしますし、友人や家族とも共有できます。

 

私は、この「Googleフォト」のすばらしさにしびれました。

 

 

(注)Googleの色々なソフトは無料で使えます。

原則としてG –Mailアドレスでアカウントをとる必要がありますが、自分が用いている他のE-Mail(携帯メールアドレスも可)アドレスでも取得することができます。

 

 

よく分からないことは身のまわりの若手か、事務所の人にたずねてください。

 

 

 

 

役員退職金の損金算入額の妥当性について

 

役員退職金の損金算入額(税務上経費として認められる金額。以下同じ。)の妥当性が近年問題となっています。

 

今年1月の最高裁で結審した「残波裁判」では、人気泡盛「残波」を製造する比嘉酒造の創業者が月々の役員報酬と高額な役員退職金の損金算入額の妥当性が争われていました。

それでは、損金算入が妥当な役員退職金とは何か?ということになります。

役員退職金の金額を算出する明確な規定は税法や通達には存在しませんが、おおむね以下の計算式が用いられています。

 

「役員退職金の損金算入額=最終の役員報酬月額×役員勤続年数×功績倍率」

 

ここで、争点となるのは2つあります。

①最終の役員報酬月額

②功績倍率

 

②の功績倍率については、相場では「3倍」までとされています。なぜ、「3倍」なのかというと、昭和40年~50年代にあったいくつかの裁判で、「3倍が妥当」という判例が出ているからといえますが、数十年たった今も変わらず使われています。

しかし、「3倍までなら問題なしか?」というとそうとも言い切れません。別の判例では、「1.18」、「2.5」、「1.4」、「2.3」とされたものもあり、一概には「3倍で安全」ということが言えません。

また、最近の判例で出た、今新しい功績倍率の考え方として、「平均功績倍率の1.5倍」があります。

 

平均功績倍率とは、類似法人の役員退職金の実際支給額などをもとに計算されます。

 

しかしながら、判例では、納税者が同業他社の退職金を参考にするためのデータがないため、ある程度までの許容範囲を認め、具体的な功績などによって個々に判断されるべきとされました。

 

この判例は、納税者が持つ情報が少なすぎる点を考慮した判決が下されたことは画期的といえます。

 

この、「平均功績倍率×1.5」が役員退職金の“新常識”になるかどうかは今不明ですが、このような判例が出たことは、既存の「3倍」からの動きが少し始まったと言えるでしょう。

 

 

 

 

 

事例として、税務調査等で役員退職金の損金算入額が認められなかった場合の追加税額、役員退職金を受け取った時の個人の所得税及び住民税がどのくらいかかるのか解説します。

 

前提として、会社が実際に支払った役員退職金が1億円、税務調査等で損金として認められた役員退職金が5,000万円、役員勤続年数が30年とします。

 

 

・法人側 追加で納税する法人税及び加算税

【支払った役員退職金1億円-損金を認められた役員退職金5,000万円=否認された役員退職金5,000万円)×実効税率(30%)=追加納税額1,500万円と加算税150万円(10%)※1】

※1 重加算税になる場合は35%

 

・個人側 退職金に係る所得税・住民税

【1億円-(800万円+70万円×[30年-20年])×1/2=4,250万円(退職所得)】

【4,250万円×55%-490万円=1,848万円(所得税・住民税)】

※2  税務調査等で5,000万円否認されたとしても受け取った個人の所得税・住民税に変わりはありません。

 

 

 

役員退職金は、会社が功労者に対して報いる最後で最大の機会である以上、多く支払いたい、多く受け取りたいと思うのは当然です。

 

最後に、役員退職金を算定する上で最も難しいのは、経営者の功績を数字にするところですので、役員退職金を考えていらっしゃる場合は、当事務所の所長、担当者にお知らせ下さい。

 

否認リスクを極力抑えた上で、長年の経営努力に最大限報いる役員退職金を考えたいと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

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高まるクラウドサービスの利用

 

業務の効率化や人材不足への対応などのために、クラウドコンピューティングサービス(以下、クラウドサービス)を利用する企業が増えています。

クラウドサービスとは、インターネット上のネットワークを介してアプリケーションを利用できる仕組みのことです。

今年5月に発表された調査結果(※)によると、平成29年のクラウドサービスの利用割合は50.6%でした。この調査で50%を超えたのは初めてのことです。

 

主なクラウドサービスの種類別利用割合を、26年の結果と比較すると下表のとおりです。

 

29年の利用割合が最も高いのはファイル保管・データ共有で、50.9%となりました。26年と比較すると、データバックアップと給与、財務会計、人事の利用割合が10%以上増加しています。間接業務での利用割合が高まっていることがわかります。

また、クラウドサービスの効果については、非常に効果があった、ある程度効果があったと回答した企業の割合が80%を超えています。

 

 

 

 

 

 

中小企業庁の2018年版中小企業白書によると、クラウドサービスには次の4つの利点があるとされています。

 

① サーバー等の設備を自ら保有することが不要。技術者の常駐も不要。

② 初期導入コストが低い

③ データ連携によっては、予約情報から売上データを生成でき、日々の決算が可能になる。

④ 企業間連携のツールとしてはクラウドサービスの方がやりやすい。

 

一方、インターネット環境に不具合が生じると業務が滞る、セキュリティ対策はサービス運営会社に委ねられている、といったデメリットもあります。とはいえ、コスト削減や業務効率化という観点からすると、資金や人員に限りのある中小企業にとってクラウドサービスは魅力的なツールと言えます。自社の状況に応じて導入しやすい分野から試してみてはいかがでしょうか。

 

【表2】クラウドサービスの一例

(※)総務省「平成29年通信利用動向調査」

全国の常用雇用者数100人以上の企業を対象に約7,300企業を抽出して行われ、平成30年5月に発表された調査です。表は100~299人規模企業のクラウドサービス利用状況をまとめたものです。

 

 

 

 

 

RPAって何?

 

新聞等でよく目にするようになったRPAって何でしょう?

RPAとはロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)の略で、ロボットによる業務自動化を表す言葉です。

 

日本は2060年には2.5人に1人が高齢者である超高齢者社会になることが予想されており、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)も1990年代をピークに減少し続けています。工場では、生産性を向上させるために既にロボットなどが導入されていますが、RPAはそれをホワイトカラーの業務に拡大していこうというものです。

 

導入することのメリットは、まず時間削減・コスト改善です。

RPAは単純作業や書類が多い部署のデータ化・データの業務フローを自動化することにより、それに係る時間・コストを削減することが出来るとともに、単純作業や書類整理に費やしていた時間を付加価値の高い仕事に割り振れるようになるため、売上拡大にも寄与することができます。

また、ソフトウエアですので、24時間ぶっ続けで仕事をさせても不満を言うこともありませんし、うっかりミスもせず同じ間違いを繰り返したりもしません。また、変化に対してもルールを書き直してあげれば柔軟に対応することができます。

 

ただ、RPAは万能ではなくデメリットも存在します。

考えられるデメリットは、指示が間違っていると本来エラーとなるものがずっと正しいものとして実行され続けてしまうことや、すべてRPA任せになってしまうので、新しい担当者が当初のプロセスの意味がわからず、仕様を変更できなくなるということもあるかもしれません。

 

具体的な導入事例として、買掛金業務の『請求書情報確認~データ入力~入力データ検証~総勘定元帳への転記』という人間が行っていた一連の流れを、最初にスキャナーで請求書情報を読み込めば『データ入力・検証・転記』をロボットが実施、人間は検証結果のチェックのみとなり、ヒューマンエラーの削減と共に、定型作業時間を65%~75%削減出来るそうです。

買掛金だけでなく、売掛金や棚卸資産・経費精算業務にも効果を出すことができますので、経理の効率化を図ることが出来るようです。

 

インターネットの記事によると、電通がRPAを使って月1万時間を超える時間創出、三菱UFJ銀行でも月8,000時間を削減出来たというのがありました。単純に時給1,000円としても月800万円から1,000万円、年間で9,600万円から1億2,000万円の人件費削減となります。

 

中小企業では、上記のような効果を出すのは難しいかもしれませんが、どの業種も人が集まらないという悩みがあると思います。まったく集まらない人材募集広告にお金を使い続けていくより、現状の人員でまわっていくシステムに投資するというのも一つの考え方ではないでしょうか?

近い将来、夜の間RPAがフル稼働し、朝パソコンを付けたら資料作成が終わっているという時代がくるのかもしれません。

 

 

 

 

 

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消費税率の引き上げ 軽減税率の導入

平成31年10月1日 準備が必要なことを理解してください

 

消費税率(地方消費税を含む)は8%から10%に引き上げられます。あと1年3ヶ月後の平成31年10月1日からです。

今回の消費税率の引上げには税理士会が課税業者の事務コストの負担があまりにも大きすぎるため反対していた軽減税率が導入されます。

前回の5%から8%への消費税率引き上げの時以上に大きな負担が会社にかかってきます。

軽減税率は、酒、外食を除く飲食料品と定期購読の一部の新聞については8%の消費税率のまま据え置くものです。

消費税率の納付する消費税の計算は次の計算式です。

納付する消費税 = 売上にかかる預かった消費税 - 仕入にかかった支払った消費税

 

軽減税率は食料品等の売上がある事業者だけに関係する話ではありません。食料品等の売上がなく、売上の全てが10%の消費税率であったとしても、例えば、会議費や交際費として飲食料品を購入した場合は、仕入にかかった支払った消費税は8%で計算する事になります。

 

従って2つの事が要求されています。

売上に係る請求書については区分記載請求書保存方式と呼ばれる形で、仕入に係る消費税が8%なのか10%なのかを証明する為に消費税率ごとに別に記載した区分記載請求書を会社は保存しておく必要があります。(逆に言えば、売上の請求書を出す側は区分記載請求書のフォームで請求しなければならない)且つ、その帳簿に区分記載請求書に基づく消費税が8%なのか10%なのかとういう事を記載していく必要があります。

このため、レジ等の新規購入については(上限100万円)、受注管理システム(上限1,000万円)の補助金が国からもらえることになっています。

また、8%、10%を個別の取引ごとに区分して記録していくために会計システムも全面的に置き換わる事になると思います。

いずれにしても、消費税の引き上げ、特に軽減税率の導入により大変な負担が事業者にかかってくるということを御理解いただきたいと思います。

関税会や国税庁、国税局、商工会議所などで順次説明会が開かれていきますので、出来るだけ経理担当者を参加させてください。

添付しているのは、ある国税局が発行した軽減税率制度対応準備の為のチェックリストです。ご参考にしてください。

注)会計士協会のホームページを見ていましたら、早速軽減税率対策補助金の詐欺も始まっているとのことです。

 

 

 

 

マイナンバーの記載率 全国平均83%台

 

申告書でマイナンバーの記載義務は税務当局から強制されていくのでしょうか?

 

所得税の申告書には、マイナンバーを記載することになっています。

しかし、マイナンバーの導入時に秘密の重要な番号だという国のアナウンス効果が高かったため、逆に反発もおき、税務当局は記載しなくても良いという形にゆるめてスタートしました。

 

2年目はどうなったのでしょうか?

所得税の申告書への記載率は全国平均83.5%で、マイナンバーの記載が義務付けられた初年度である前年の82.9%から微増となりました。

また、個人消費税の申告書の記載率の全国平均は74.2%、贈与税は82.1%でした。いずれも所得税の申告書と同様に沖縄所管轄の納税者の記載率が最も低くなっています。

 

なお、マイナンバーの記載は国税通則法などで義務とされているが、不記載に対する税法上の罰則は設けられていません。

 

今後、罰則や罰金などの形でマイナンバーの記載が強制化されていくのでしょうか?

 

 

 

 

IT化に補助金が活用できます 「IT 導入補助金」

 

現在、平成29年度補正予算「サービス等生産性向上IT導入支援事業」として、「IT導入補助金」の公募が行われています。これは、ソフトウェアやサービス等のITツールを導入する中小企業・

小規模事業者等を支援する補助金で、導入経費の一部が補助されます。

さまざまな業種、さまざまな課題に対応した補助金です。業務の効率化や売上アップ等のために

IT ツールを取り入れるなら、この機会をお役立てください。

 

■補助金を受けるには

この補助金では、IT導入支援事業者※が導入から申請・手続き、アフターフォローまでをサポートします。対象となるのは、IT導入支援事業者が登録しているITツールの導入費用。様々な課題・ニーズに対応したITツールが登録されています。

 

※IT 導入支援事業者

当補助金事業の登録・認定を受けたIT ベンダー・サービス事業者です。IT 導入を提案、サポートする他、当補助金の交付申請や実績報告をみなさまと共同で作成し、代理で申請を行います。

 

【補助金の額】

上限額      50万円

下限額      15万円

補助率      1/2以下

 

 

 

【こんな活用方法があります】

・顧客管理システムの導入

顧客の要望や注⽂履歴をIT ツールで記録することで、きめ細やかなサービスを実現。リピーターの獲得につながります。

・在庫管理システムの導入

在庫管理を⼀括データ化して、業務効率を改善。社内の連絡や取引先との連携も円滑になります。

・コミュニケーションツールの導入

帳簿や書類をIT 化して、作成・提出の時間を短縮。早番・遅番等、出勤時間の異なる従業員同士の情報共有もスムーズになります。

・車両管理システムの導入

効率的な配⾞を組めるようになり、従業員の勤務時間の短縮につながります。

・予約管理システムの導入

予約状況を⼀元管理して予約時のミスを防⽌。新規顧客獲得や予約率向上に役立ちます。

 

 

 

 

 

■申請・手続きの流れ

以下の手続きは全て「IT 導入補助金」のホームページ(https://www.it-hojo.jp/)で行います。

 

① 経営診断ツールでの診断・ITツールの選択等(交付申請の準備)

まず最初に、「IT導入補助金」のホームページにある「経営診断ツール」で診断を行い、その結果等をもとにITツールやIT導入支援事業者を選定します。また、同ホームページにて「SECURITY ACTIONへの宣⾔(セキュリティ対策自己宣言)」を行います。

 

② 交付申請(IT導入支援事業者による代理申請)

IT導入支援事業者と商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。「IT導入補助⾦」ホームページに「申請マイページ」が設けられ、必要な情報登録等はここで行います。この時、IT導入支援事業者がみなさまの情報を取りまとめ、代理で申請を行います。

 

③ ITツールの発注・契約・⽀払い(補助事業の実施)

「交付決定」を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払い等を行うことができます。交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助⾦の交付を受けることができません。ご注意ください。

 

④ 事業実績報告

補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約、納品、支払い等を行ったことが分かる証憑を提出します。IT導入支援事業者が事業実績報告に必要な情報・証憑を取りまとめ、代理で報告を⾏います。

 

⑤ 補助金交付手続き

補助金額の確定後、「申請マイページ」で補助額を確認します。その後、補助金が交付されます。

 

⑥ 事業実施効果報告

事業終了後5年間(計5回)にわたり、毎年4月1日から翌年3月末日までの1年間における生産性向上等に関する情報について、事務局に事業実施効果報告をします。1回目の事業実施効果報告では、2018年4月1日から2019年3月末日までの期間(1年間)の情報を、2019年4月以降に報告することとなります。


 

※⼀次公募での予算の執⾏状況により、二次公募以降は変動する可能性があります。

※中小企業・小規模事業者等(1 法人・1 個人事業主)当たり、1回のみ申請することができます。

※昨年度「サービス等生産性向上IT 導入支援事業」に採択された事業者も申請できます。

※⼀次公募で不採択となった場合でも、二次公募以降の公募に申請することができます。

 

 

 

 

 

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気づき通信 平成30年05月企業

 

税務署への申告にエクセルが利用できるようになる

 

ITを活用し色々な仕事の合理化を図っていこうというのが日本の国の大方針です。

税金の世界でも申告や届出について電子申告を使いなさいという方針はますます強化されています。

平成32年4月から資本金1億円超の大会社は法人税と消費税の申告、及び、届出に関する色々な明細書等全て電子申告(インターネット経由)でしなければならない事になりました。つまり、色々な表をインターネットで出しなさいというルールです。

しかし、掛け声だけではうまくいきません。電子申告が始まったのは10年以上前です。対応するソフトが上手に作られている必要があります。

 

今一番使われているパソコンの表計算ソフト エクセルなしでは日常の経理業務はうまく動きません。ところがこのようなエクセルは電子申告には使えないというルールでした。

なぜかというと、セキュリティ重視なのか、それともエクセルのようなソフトを使うと電子申告を作った会社が儲からない制度なのか、どちらなのかは分かりません。

例えば売掛金の明細データのようなものは、会社はエクセルで加工していても、電子申告ではエクセルデータではなく、国が作ったソフトの枠に移し数字を入れ直すという事が必要でした。要するに世間一般では普通に行われていることを電子申告ではそのまま利用出来ないという不合理がありました。

そこで、とうとう電子申告の世界でもエクセル(エクセルデータに容易に変えられるCSV形式)が大幅に認められる事になりました。

国が電子申告を行えと言いながらも、電子申告を行うためには大変な手間暇がかかるソフトを開発していたわけですので矛盾する話ですよね。

ようやくエクセル形式が使えるように変わる予定です。国がエクセルの標準フォームを提供し、そのフォームの形でエクセルデータをまとめて電子申告することになりそうです。これは、平成31年4月以降の申告から、決算書等については平成32年3月以降の申告から利用されるとの話です。

 

税理士会がエクセルファイルを使えるようにしてくれと要望をし始めてから何年間たったのでしょうか…。日本の国の電子化はちくちくとして進みません。

 

 

特例事業承継税制を使うか

 

平成30年度から未上場会社の株式を相続や贈与の形で後継者に引継ぐ場合に相続税や贈与税が免除される特例が大幅に充足されました。

ただし、この特例を受けるためには平成35年3月31日までに特例事業承継計画というものを事前に届出する事が必要であるとされています。

はっきりさせておきたいのは、この制度の理解がなかなか経営者の方々には広まらないようです。

 

1.すぐに相続が発生した場合に「この届出書を出していないと困る事が有るのか」という話についてですが、実は困る事はありません。

つまり、平成35年迄の間に現在の社長に万一の事があり、慌てて後継者が株式を引継ぐ場合、実は事前の届出は必要ありません。

この特例事業承継税制でいう未上場会社の株式についての相続税はかからないということを選択する事が原則できます。

 

問題なのは、平成35年4月1日から平成39年12月31日までに相続や贈与が発生した場合です。つまり5年後以降の5年間に相続や贈与が発生した場合です。その時には、予め平成35年3月31日までに特例事業承継計画を提出しておかなければならないというルールになっています。

 

そこで、特例事業承継計画を事前に提出するようにお客様方に説明しているのですが、お客様の方ではうまく理解できないようです。

なぜならば、後継予定者の名前、後継する時期、贈与する時期という事、更には後継者が贈与を受けてから5年間の経営計画等を記入し提出しなければならないという事になっていますので。

ところが、見逃されているのは、この計画は守らなくてもいい、つまり平成39年12月31日までに贈与を強制するものではありません。贈与をした場合に贈与税がかからないという特例が受けられると言っているだけの事。

 

2.特例事業承継計画は変更できること

つまり、後継者を変える、後継者が長男と思っていたが次男に変えるという事は自由にできます。大体、10年先に会社がどのようになっているかも分からないわけですので。

 

3.この特例計画を作った後に実際に相続や贈与が発生したとしてもこの特例を受けるかどうかは、その後継者の判断によります。

つまり、相続税贈与税を免除する替わりに、原則ずっと株式を所有して下さいね、というルールですので、後継者がそんなルール嫌だと思えば、相続税贈与税は払うけれども、逆にこの特例を受けない方が良いという判断をする事もできます。

つまり、この特例は単なる保険としての意味合いしかありません。

とすれば、しばらく様子をみてから、あまり真剣に考えずに出すだけ出しておく、万一これを使いたいなと思った時に後継者が使えるようにしておくという意味合いの保険でしかないのです。

 

ただし、どの世界にも商売上手な人はいるもので、金融機関等ではこれを大幅に盛り上げて売り込もうとする動きも活発になっているそうです。

当然、後継者が複数の場合には、会社を分割しましょうとか、あるいはこの特例を受ける会社と特例を受けない会社を分けるとか色々なことが予想されます。

 

注意してほしいのは、「相続税」「贈与税」の免除ではなく、納税を猶予するのが原則です。

事業があって事業を続けずに相続・贈与を受けた株式を売却した場合は相続税・贈与税の納税が(制限はありますが)復活します。

とすれば、相続・贈与がおきる前に株の評価を少しでも安くしようと頭をしぼることになります。

 

 

 

 

 

 

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気づき通信 平成30年03月企業

 

年収1,000万円以上を狙い撃ち

 

日経新聞のビジュアルデータ3月9日版に給与年収1,000万円以上に対する増税が急速に進んでいるという記事を見つけました。インターネットでも色々引用され、コメントが付けられています。

 

毎年のように高額所得者に対する増税が進んでいるとは常々感じていましたが、長い目で見るとここまで増税が進んでいるのかという気が致します。

高額所得者の人にのみ厳しい。また、記事によると今度ともこの傾向は更に進むとのこと。昨年末、所得税を増税するのに年収850万円以上にするか(自民党案)、900万円以上にするか(公明党案)でもめた事が思い出されます。

その記事によれば、2016年では給与所得者の4.2%が全体の税額の49.9%を払っていらっしゃるとの事です。

 

そういえば、個人事業で一生懸命頑張って事業がうまくいき所得が急速に増えたが、税金が倍近くに増え、身体を悪くするくらい頑張って所得を増やしたのに手取りで見たらそれほど増えない、やる気をなくしたと仰っていた方がいるとの事。

また、この記事が話題になっているブログのページを見つけて見てみると、やる気をなくすと言う人もいれば、逆に儲かっているのだからいいではないかと言う人もいてそれぞれだと思いました。

 

ある経済学の教授はこうコメントされていました。

『所得税より相続税を強化すべき。所得課税は、勤労意欲を削ぎます。所得税の累進課税は、起業家精神にもマイナスです。「起業すれば大儲け出来るかもしれない」と思うから人々が起業して経済が活性化するのですが、「起業して大儲けできても、税金が増えるだけなら、やめておこう」と思う人が増えては問題です。それなら、相続税を増税しましょう。相続税は勤労意欲を削ぎません。「棚から落ちて来たぼた餅が思ったより小さかった」というだけですから、重税感も少ないでしょうし、何より所得税より公平感があります。自分で稼いだお金ではないのですから。特に、配偶者も子も親もいない被相続人の遺産には、高い相続税率を課しましょう。兄弟姉妹が相続する必要はありませんから。加えて、被相続人が受け取っていた年金は他人の子供たちが納めた年金保険料から出ているのですから、使い残した分くらいは国庫に納めましょう。所得税より相続税を強化すべき所得課税は勤労意欲を削ぎます。』

 

私の感覚ではこれが一番近いのかなと思います。ちなみに、高額所得者(年収1,000万円以上)については奥さんが専業主婦の場合に所得税を減らす効果があった配偶者控除が今年から受けられなくなります。どうしたら良いですかと尋ねられますが特に配偶者控除が受けられないことに対する対策は知りません。一体日本はどういう方向にいくのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

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気づき通信 平成30年02月企業

 

所得税の確定申告の時期に思う事

 

今、所得税の確定申告の時期です。会計事務所はとても忙しい時です。今年の税法改正案も出て色々な事を思います。

 

1 昨年の所得税の確定申告書はどれくらい出たと思いますか。

実に2170万件です。このうち、医療費控除等で税金を返してくれという申告書が1257万件、約6割というところでしょうか。逆に申告納税に関する話では637万件、事業所得での納税が173万件、不動産所得が多い納税が110万件、等々となっています。日本の総人口が1億2700万人、仕事についている人が6440万人といいますから、相当な人数です。

国税庁の人員は日本の厳しい財政を反映して増えていませんから、効率的に賄っていくために今次のようなことを行っています。

①申告書を紙で郵送せず、インターネット(電子メール)で連絡し、電子申告してもらうように誘導しています

②電子申告をする人にとって、税金が少し安くなる有利な仕組みを平成32年から導入します

③色々なデータを電子データとして集め、このデータと申告書を照合するような仕組みを着々と開発しています(生命保険金の申告漏れ、家賃の申告漏れ等を発見)

 

2 法人税の世界でも、大企業がすべての電子申告するように税制を変えます。

これは極端で、電子申告しなければ法人税の申告をしていない(無申告)として扱うという非常に厳しい罰則を設けます。しかも、科目明細書他、一式全てを電子申告しろというルールであり、これは平成32年から始まります。

マイナンバー等が進んでいる北欧のある国では、申告書は国が作り、国民がそれと違う場合のみ出し直すという制度を取っている国もあるとのこと。国としては是非ここまでやりたいのではないでしょうか。

 

3 国民の財産の把握

電子申告とあわせて進んでいるのが国のIT利用による国民の財産把握です。現在、相続税の時のみ財産の申告が行われています。

しかし、財産債務調書申告制度があります。所得が2,000万円超、且つ、3億円以上の財産(株式投資等であれば1億円以上)である人が財産と債務の状況を詳細に自主的に報告しなければなりません。また、海外に5,000万円以上の財産を持っている人は海外財産調書という形で財産目録を毎年提出しなければなりません。申告書用紙はOCRもしくは電子申告で行う事になっておりマイナンバーも当然要求されています。

 

 

この二つの制度は緩やかな運用が現在行われている制度ですが、税務調査の時に提出していない事、若しくは極めて大雑把に作成している事が分かると強く指導され詳細な財産債務調書を提出するように要求されます。さすがに税務調査の場面で要求されると細かいものを提出せざるを得ません。一度提出されればそれはコンピュータに保存され、将来にわたり利用されていく事になります。

 

また、金融資産の把握も進んでいます。現在、証券会社に口座を開くとき、あるいは、NISA等の取引等を始めようとするときはマイナンバーの提示が必要条件であり、証券会社は既存の取引先についても2018年12月末までにマイナンバーを集め終わらなければなりません。特定口座という形で証券会社に預けている財産の内訳が明らかになることを嫌がっていても、結局は国の力が強い証券業界は協力することになるでしょう。尚、マイナンバーを今年中に提出しなかった場合、来年以降その証券会社で取引できるかどうかは分かりません。

銀行については、新規に口座を開く場合等は現在マイナンバーの提示が求められていますが、法律上は強制ではありません。銀行は2021年度までに全ての既存口座についてマイナンバーを収集することになっています。これにより、相続税申告の際、より容易に正確に財産の把握ができる形が進むのでしょう。

 

それよりももっと私が想像している事があります。

今、老齢者の格差問題が盛んに騒がれています。今年の税制改正でも所得の高い人に対して厳しい増税が行われています。現在でも、高齢になってからの介護保険や医療保険、厚生年金については所得の有無、高い低いがその高齢者の負担と結びついています。即ち、所得の低い人については介護保険料、あるいは健康保険料も安い。且つ、介護保険や医療保険を使う時の自己負担率も低い。所得の高い人は保険料も自己負担比率も高い。所得に関わりなく貰える社会保険の給付は年金だけです。

では、金融資産を既にたくさん持っている人になぜ年金を払わなければならないのだという論調になっていけばどうなるでしょうか。

所得の把握は、ある程度できる仕組が整っています。しかし、金融資産などの財産の把握は難しい。しかし、今後はマイナンバー活用で国民の財産の把握が容易になっていく。

財産がない人は多く、財産がある人は少ないとすれば、政治の世界では、必然的に健康保険料や介護保険料など所得が少なくても財産をたくさん持っている人からたくさん保険料を取れ、介護や医療のサービスを受ける時も所得が少なくても財産をたくさん持っている人からはたくさん取れ、年金も財産をたくさん持っている人には払うなというような、所得、財産という意味で貧しい人がよりラクをするような仕組みに広がっていくのではないでしょうか。

国民全体の助け合いという意味では、ある面でいえば正しいのですが、但し、これは自分達の子供や孫に所得を上げると損をするから所得の少ない仕事に就きなさい、財産を貯めるのもやめなさい、と言っているのと等しいのではないかと思います。

しかし、おそらく、私が想像している方向へ進んでいくのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

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